ヤンキー姉さんも乗ってた“オシャレすぎる原チャリ”の伝説 世界の一流ファッションブランドが日本の原付に注目 なぜ?
1980年代前半から中半にかけて、日本は空前の原付スクーターブームが巻き起こりました。その火付け役となったのが、ホンダから発売されたスクーターのタクトです。そんなタクトに、人気ファッションブランドのコラボモデル「クレタク」が登場しました。
コラボスクーターも「聖子ちゃんから明菜へ」
しかし、当時のホンダ的には「クレタクのヒット」の残像がまだまだ消えない1986(昭和61)年、今度はタクトを凌駕するスクーター・DJ-1に、これまた女性ファッションブランドであるVIVA YOUとのコラボモデルである「DJ-1Rビバユー」をリリースします。当時大ブームとなっていたDCブランドの一つ、VIVA YOU得意の「水玉」と「モノトーン」を組み合わせた外観でした。
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ホンダはクレタクの「聖子ちゃん的」な印象から、時流の変化に合わせ、なんとなく「明菜的」な雰囲気に舵を切ったようにも映りますが、その販売計画は2000台。初代クレタクの5分の1ほどと控えめで、DJ-1Rビバユーはクレタクほどの強いインパクトはなかったように筆者は記憶しています。
また、スズキからリリースされヒットとなっていたハイというスクーターモデルにも、1986年、DCブランド・パーソンズのコラボモデルが登場。明らかにホンダの試みに対抗したものと思われますが、やはりクレタクほどのインパクトには及びませんでした。
クレタク、DJ-1Rビバユー以降、ホンダでは「ファッションブランド×スクーター」のコラボは行っていません。しかし、そうであっても1980年代当時、今ほど企業間のコラボが盛んではなかった時代に、こういった取り組みをしたことは斬新で評価すべきことのようにも思います。
2021年にはイタリアのスクーター、ベスパの75周年を記念し、世界的ファッションブランド、クリスチャン・ディオールとベスパがコラボスクーターを発売。少なからず、かつてのホンダの「ファッションブランド×スクーター」の実例も参考にしていると思われ、それが正しければやはりクレタク、DJ-1Rビバユーは有意義な取り組みだったと言って良いでしょう。
また、特にクレタクはその「伝説」がゆえに、今も中古車市場で絶大な支持があり、比較的個体が綺麗なものは40万円以上の価格帯で取引されています。バイクもクルマも、「限定車」「特別仕様車」は終売後に価値がグッと上がるものですが、今から40年以上も前のクレタクが、ここまで価値があるのは少々意外に感じる人もいるかもしれません。
どうしてクレタクが今なお一定の支持があるのかの理由は、発売当時のヤンキーブームを背景に、クレタクをベースにしたヤンキー仕様のカスタムなどが一部から好評価があるからのようです。今日では、ある意味「スクーター版・旧車會」的な価値を生み出しているクレタク。発売当時に青春時代を送った人たちにとって、記憶に残るほどのインパクトあるスクーターだったように思います。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
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