「バス路線4割廃止する!」怒りの“荒技”を繰り出した結果 日本有数の“バス競合都市”どう変わる? 立役者に聞く
9つものバス事業者が競合する岡山市で、市が路線の運行経費などを負担する「公設民営」方式を導入し、バス路線網を再編します。岡山市を動かした大きなきっかけが、2018年に地元最大手のトップが実行した“荒技”でした。
「路線の4割“廃止届”提出」という荒技
岡山市のバス路線再編の背景には、マイカーの普及による利用者減少に加え、小泉純一郎政権の規制緩和で2002年2月に施行された道路運送法改正によって、バス路線への参入や撤退が容易になったことによる競争激化があります。
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岡山市で「めぐりんバス」の運行を2012年に始めた八晃運輸は17年、両備ホールディングス(HD)の岡山駅と西大寺バスセンターを結ぶ両備バス西大寺本線と競合する益野線の開設を中国運輸局に申請しました。運賃は全線乗っても大人250円と、「両備グループで一番のドル箱路線」(小嶋代表)の西大寺本線より約4割安く設定しました。
小嶋代表は「過当競争に陥って西大寺本線の採算が悪化すれば赤字路線を維持できなくなる」と認可しないように要請。ところが認可され、2018年4月に走り始めました。
反発した両備グループは2018年2月、両備HDと岡山電気軌道(岡電バス)の2社が岡山県内で運行する路線の約4割に当たる計31路線の廃止届を提出しました。
小嶋代表は、かつて南海電気鉄道が廃止する方針だった貴志川線を引き継いだ和歌山電鉄(和歌山市)の社長も兼務し、三毛猫「たま」を駅長に起用する奇抜なアイデアで集客に成功して「地方公共交通の救世主」と称賛されていただけに、衝撃が走りました。
もしも両備グループが31路線を全て廃止した場合、1日当たり約5500人に影響が出る計算でした。ただ、筆者(大塚圭一郎・共同通信社経済部次長)は当時、「廃止届は国や自治体に規制緩和の再考を迫るイエローカードで、廃止はしない」と確信していました。
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