「アメリカとロシアの戦闘機、どっち空母に載せたい?」という本音 インドがトランプ大統領の提案に応えられない“自己矛盾”

アメリカのトランプ大統領がインドへF-35戦闘機を売り込む意向を明らかにしました。しかし、これにはさまざまな障害があります。仮にホンネではF-35を導入したくても、インドは難しいかもしれません。

インドが掲げる「国策」が最大の障壁に?

 もう一つの問題が、インドが推敲している国家プロジェクト「メイク・イン・インディア」です。

Large 20250220 01

拡大画像

「エアロ・インディア2025」で飛行展示を行うインドの国産戦闘機「テジャス」(画像:インド国防省)。

 インドではモディ氏が首相に就任した2014(平成26)年から、製造業を発展させるため主要な産品をインド国内で生産する「メイク・イン・インディア」プロジェクトを推進しており、その一環として軍の運用する外国製兵器も、極力インド国内で生産してきました。

 ところが、F-35に関してアメリカは原則としてライセンス生産を認めていません。F-86Fからアメリカ製戦闘機のライセンス生産を行ってきた日本もその例外ではなく、航空自衛隊が運用しているF-35A戦闘機は、アメリカなどから部品やコンポーネントを購入して最終組み立てを行うノックダウン生産によって供給されています。なお、F-35のノックダウン生産が認められているのは、日本とイタリアの2か国だけです。

 航空自衛隊がF-4EJ「ファントムII」の後継機を選定していた2000年代後半、アメリカはF-35Aが採用されれば、価格ベースで40%程度、F-35Aの国産化を認めるという提案をしていました。この提案は主に日本側の事情で実現せず、ノックダウン生産と完成機の検査、一部部品の国産化などで落ち着いたのですが、当時この提案に対しては、F-35プロジェクトに開発パートナーとして参加していた国々から、不公平なのではないかという批判の声も存在していました。

 インドがF-35を購入する場合、最低でもノックダウン生産容認程度の条件を引き出せないと、「メイク・イン・インディア」と矛盾が生じてしまいます。アメリカが日本とイタリアにF-35のノックダウン生産を容認した理由の一つは、両国に第5世代戦闘機の最終組み立てができる技術力と製造基盤があると判断したことにあります。

 一方、インド空軍はフランスからダッソー「ラファール」戦闘機を36機購入しています。インドは19号機以降をライセンス生産する計画でしたが、インド側の製造基盤の能力不足により、全機フランスからの完成機輸入に切り替えています。

 トランプ大統領が共同会見で述べた「最終的」がいつごろなのかは不明確ですが、それがトランプ大統領の任期中を意味するもので、かつインドが「メイク・イン・インディア」と矛盾せずにF-35を導入したいのであれば、技術力と製造基盤を急速にレベルアップする必要も生じますが、それは容易なことではありません。

【これがインド式ステルス戦闘機だ!】インドの大手防衛関連企業が展示した国産ステルス戦闘機の模型を写真で(画像)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

最新記事

コメント

1件のコメント

  1. ついでにホーネットをライセンス生産可能にして売り込んでみたら?