「欧州標準戦車プロジェクト」のリスクヘッジ? 事実上の“レオパルト3”を考え始めたドイツの魂胆とは
ドイツとフランスが共同して次世代戦車の開発を進めるなか、ドイツ軍が自国の3社へ対し、レオパルト2の近代化改修にかかる技術研究を委託しました。次世代戦車までの“つなぎ”としたいようですが、新技術モリモリの別仕様にも見えます。
砲身に新・防御システムの研究 ドイツの思惑は
今回のBAAINBwの仕様におけるポイントは、130mm砲ではなく砲弾の研究としているところです。砲の開発と謳ってしまうと「レオパルト2」の砲塔を新規設計する必要があり、結果、改修とはみなされずフランスからMGCSへ対する抜け駆けとも受け取られかねません。ラインメタルは砲弾の生産能力を向上させる方に投資し続けており、砲弾研究としているのはフランスからのクレーム回避策に見えます。主導権をドイツ側に引き寄せたい意図もあるのでしょう。
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また、砲身への熱影響を自動で補正するシステムを採り入れようとしています。気温や砲弾の負荷などは、射撃精度を低下させる一因となり、現場部隊では定期的に照準器と砲口を補正する、いわゆるボアサイトが必須です。これを自動化して乗員の負担を軽減し、作業時間を短縮しようというのです。
もうひとつ注目すべき点が、KNDSドイッチェランドに委託された新しい防御システムです。ドイツは「プーマ」歩兵戦闘車にヘンゾルトが開発したMUSS(多機能自己防衛システム)という対戦車ミサイルに対処するアクティブ防護システムを装備しており、バージョンアップさせたMUSS2.0も発表されましたが、これとは別物になりそうです。
BAAINBwの仕様によると、新MUSSは電子光学センサーで環境や脅威を探知し、それに対応する統合システムとされています。詳細は不明ですが、レーザーで光学的に周囲を照射し、物体から反射された光を検知識別する「LiDAR」の応用とも考えられます。
新MUSSは、精度は高く、有線誘導、レーザー誘導の両方の対戦車ミサイルだけでなく、曳光弾、銃口の閃光、サイト類の反射光も検知できるようです。従来のカモフラージュは無意味になるというのはユニークですが、まだ情報は少なく、能力や可能性はよく分かっていません。
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