「欧州標準戦車プロジェクト」のリスクヘッジ? 事実上の“レオパルト3”を考え始めたドイツの魂胆とは
ドイツとフランスが共同して次世代戦車の開発を進めるなか、ドイツ軍が自国の3社へ対し、レオパルト2の近代化改修にかかる技術研究を委託しました。次世代戦車までの“つなぎ”としたいようですが、新技術モリモリの別仕様にも見えます。
本音は“レオパルト3”を独自に開発したい?
ロシア・ウクライナ戦争では当初、「ジャベリン」など対戦車ミサイルの脅威がクローズアップされており、その対策として新MUSSが研究されていたようです。しかし皮肉にも、現在の脅威はドローンです。戦場の変化が速すぎます。
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BAAINBwレポートによると、「ブリッジソリューション」の研究は2026年に完了し、導入は2030年代で、耐用年数は25年程度を想定しています。ドイツのMGCSに対する熱量は高いとはいえず、ラインメタルは2022年に次世代戦車KF51「パンサー」を発表しました。KNDSは2024年、「レオパルト2」のA-RC 3.0バージョンを発表しています。ここまでは民間企業の営業活動ともいえるのですが、「レオパルト・ブリッジソリューション」は新MUSSなど新機軸を盛り込んで、ドイツ連邦軍が出してきた点がポイントです。
一方で1月23日、パリでMGCSを開発する合同会社設立のための株主協定が署名されました。本社はドイツのケルンに置かれ、株主はドイツのKNDSドイッチェランドとラインメタル、フランスのKNDSフランスとタレスで、各社がそれぞれ株式の25%ずつを保有し、ドイツとフランス両国の出資比率は50%ずつとなっています。MGCSプロジェクトも新しい段階に入りました。
フランスは同じ「橋渡し」として、「ルクレール」戦車を近代化改修し「ルクレールXLR」としてMGCSまで延命しようとしていますが、明らかに熱量は違います。戦車市場をめぐる両国の思惑が交錯しているのが分かります。
「レオパルト2・ブリッジソリューション」という名称には、ドイツの意図が見え隠れしています。中身は「レオパルト2」とは別物で、本当は“レオパルト3”と呼びたいところでしょう。MGCSが頓挫した時の保険となる可能性が囁かれます。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
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