『パトレイバー』登場の戦闘車両だ! 都会のど真ん中で見つけた軍用車 なぜ大阪に?
第二次大戦以前から様々なタイプの装輪装甲車を開発していたイギリス。戦後に開発された4輪装甲車「フェレット」は1970年代まで生産され、現代でも一部の国では現役です。また軍払い下げの中古車両のうち1両が日本にあります。
ウクライナ戦争で再び最前線へ
「フェレット」装甲車は、イギリス軍やオーストラリア軍、カナダ軍などの英連邦軍だけでなくアジアやアフリカの新興国にも採用され、2024年時点でも、インドネシアやカメルーン、ジンバブエ、ケニアなどでは現役で運用され続けています。
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すでに本国イギリスなどでは退役しているため、MAOの車体は軍から民間に払い下げられた中古車が海を渡って日本へやってきたものになります。現在の所有者である松井館長によると、2012年にイギリスから輸入され、日本の「なにわナンバー」を取り付けたうえで、今ではMAOの展示品の目玉となっているそうです。
なお、イギリスを含む諸外国では、退役した軍用車両をモスボール保管する代わりに、博物館や個人コレクターなどへ無償譲渡や有償での払い下げが行われています。それらは、普段は民間で維持整備が行われるものの、有事の際は軍用として再び接収されたり、もしくは現役車両のための部品取り用として活用されたりして、軍務に復帰することもある模様です。
実際、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻でも、ある程度まとまった数のフェレット装甲車がウクライナ側へ送られており、一説では前線後方のウクライナ軍のドローン部隊等で運用されているとのこと。そうだとすると、開発から75年以上経ってからの再利用となり、陸戦兵器の息の長い寿命を感じずにはいられません。
「フェレット」装甲車が日本で唯一保管されているミリタリーアンティークス大阪(MAO)では、6か月毎に展示内容を入れ替えて貴重な英軍装備の公開日を設けています。
そうした機会に伺えば、展示されている同車を間近に見ることが可能です。銀幕デビューも果たした貴重なイギリス生まれの軍用車両、興味を持たれたなら足を運んでみてはいかがでしょうか。詳しくは同館のホームページやSNSでの告知をご覧ください。
Writer: 吉川和篤(軍事ライター/イラストレーター)
1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「九七式中戦車写真集」や「イタリアの中戦車・重戦車写真集 」、「イタリア軍写真集」など。
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