物流の人手不足は「インフラ投資が足りない」から! 大量輸送をもっと使え! 「民間に投げっぱなし」を変えるための“提言”【物流と鉄道“失われた30年”後編】
人手不足が深刻化し、貨物量自体は微減を続ける日本。これは政策の限界、さらには「インフラ投資の不足」としての結果という側面があります。3回の連載の仕上げとして、日本が次の時代を目指すうえでの政策と投資の方向性を提言します。
「運送会社にやらせておけばいい」は自滅の道 輸送こそが付加価値の源泉
このほか、日本の物流が労働集約に留まっている大きな原因として、輸送はコストセンター(コストだけが集計され、利益は集計されない部門)という捉え方も大きく影響しています。ただコストさえ下げれば良い、深く考えず運送企業に押し付ければ良いという捉え方です。

これですと、運転手は荷卸しをして次の配送先に行きたくとも、荷主が荷卸しを要求すると運転手もトラックも次に行けず、労働生産性がさらに下がってしまいます。それもフォークリフトではなくバラ積みの手積み手卸しの場合すらあります。
このような生産性の低さは結局、運賃や人手不足として荷主にはね返っています。ならば、米国ウォルマートのように立場の強い荷主が主導して、規格化・標準化・機械化・情報化などで輸送の労働生産性を上げることを考えていくべきでしょう。相手にさせて自分の仕事を減らすのではなく、全体で無駄を無くしていくという意識の切り替えが必要です。
欧米ではトレーラーで輸送し、到着すると運転手はトレーラーを台切りして即座に次の現場に向かい、荷扱いは着荷主が行います。このため、日本で問題になっている荷待ち自体が存在しません。
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これまで製造業は、工場で付加価値が生まれると教えられてきました。それも事実ですが、製品を組み立てても高く売れる地域に運ばないと収益は上がりません。つまり運ぶことで価格が上がり収益が生まれています。むしろ、今は運ぶことをしっかり考えないとビジネスが成り立たない時代になっているのです。
今までの考え方を見直すべきなのは政策だけでなく、荷主となる企業にもあるのです。
※この記事は2024度「第24回 貨物鉄道論文」最優秀賞「陸海一貫インターモーダル輸送の可能性と社会効果」(金沢大学 伊東尋志〔経済学博士課程 元えちぜん鉄道専務〕/合同会社日本鉄道マーケティング 山田和昭共著)の内容と、伊東氏とのディスカッションを元に構成したものです。
Writer: 山田和昭(日本鉄道マーケティング代表、元若桜鉄道社長)
1987年早大理工卒。若桜鉄道の公募社長として経営再建に取り組んだほか、近江鉄道の上下分離の推進、由利高原鉄道、定期航路 津エアポートラインに携わる。現在、日本鉄道マーケティング代表として鉄道の再生支援・講演・執筆、物流改革等を行う。
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