ウクライナ空軍に学べ!「軍用機の地上撃破の防ぎ方」自衛隊も即採用できる賢い方法って?

2022年2月のロシア軍によるウクライナ侵攻で、当初短時間で壊滅すると思われたウクライナ空軍が3年経っても健在なのには、軍用機の分散運用が大きく関係しているとか。一体どういうことなのでしょうか。

日本列島の細長さは逆にメリット

 ロシアによる全面侵攻が始まった当初、世界中の多くの軍事専門家は、ウクライナ空軍が開戦初頭に壊滅することを予測しました。ロシア空軍が、その圧倒的な戦力と、各種の長射程ミサイルを使った先制攻撃で、ウクライナの航空基地を封鎖し地上で殲滅することは「既定路線」と見なされていたのです。

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機動分散運用のために岡山空港に展開した航空自衛隊のF-2戦闘機。民間空港への臨時展開はミサイル攻撃に対する防御に非常に効果的(画像:航空自衛隊)。

 しかし、その予測は覆されました。開戦から3年を経た現在に至っても、ウクライナ空軍は戦力を保持し、なおも作戦行動を継続しています。その原動力となったのは、掩体による部分的な防護だけではありません。彼らが採ったのは、航空機を常に「動かす」という柔軟かつ機動的な戦術にあります。

 ウクライナ空軍は、敵の攻撃圏内にある従来の基地に固執せず、航空機を分散・展開させ、臨時の発着場を転々と移動しました。数日ごとに拠点を変更することで、敵に正確な位置を把握させず、ミサイル攻撃を空振りさせ続けたのです。まさに、この「分散機動」こそが、ウクライナ空軍が戦線を維持し続ける原動力となっているのは間違いないでしょう。

 この戦術的発想は、日本においても有効に機能します。日本列島は、北海道から沖縄に至るまで、東西南北に数千kmにも及ぶ「縦深」を備えています。ウクライナの場合、ほぼ全土がロシアのミサイル圏内に入っていることを鑑みると、それと比べて日本は有利だとも捉えられます。

 日本には大小100を超える民間空港が点在し、戦闘機や輸送機の離着陸に十分な滑走路を備えている滑走路も少なくありません。これらを臨時飛行場として活用し、戦闘機を分けて展開させることで、敵の攻撃についても分散させ、ウクライナ空軍のように地上撃破のリスクを最小化しつつ、持続的な航空作戦を維持することは十分可能です。

 航空自衛隊もすでに「機動分散運用」の名の下、民間空港における離着陸や、地上部隊の展開訓練を重ねています。深刻化する東アジア情勢の下、今後、日本列島の縦深性を最大限に活かしたこの戦術は、防衛戦略の中核として、ますます重要性を増していくことでしょう。

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Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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コメント

1件のコメント

  1. 驚きだね~、今頃になって「分散機動」だって? 今まで何も考えてなかったのか?何十億もする機体をスポーツカーでも並べておく感覚だったのか?こんな調子ではレーダーサイトも、防空手立ては何も考えられていないのじゃないか?AWACSが有るから問題無いとでも?そんなもの滑走路を潰されたら何処に落ちるのか?

    ダミーのサイトを多数作るとか、レーダー本体は地下深くに置き、複数のアンテナにアクセス出来るようにするとか、今のままじゃ初撃一発で終わりだと思うが大丈夫か?国内にはスパイが思うままにはびこり、調べ尽くしていると思ってほしい。