「ティーガーだ!」←見間違いでした “最恐戦車”そんなに多くないから 実は現代戦でも起こる危険性が
戦場においてある兵器を恐れるあまり、人間の心理が生む誤認。現代戦ではドローンという新兵器が、かつてのティーガーIとは違った心理状態に追い詰めているようです。
「ティーガー・ファントム現象」とは
「ティーガーが出た!」

第2次世界大戦において、ドイツ軍の「ティーガーI戦車」は連合軍将兵にとって恐怖の象徴でした。目撃情報があるだけで部隊が浮足立つというエピソードには事欠きません。しかし、実際に戦場で遭遇した戦車が本当にティーガーIだったのかというと、必ずしもそうではないようです。
1944(昭和19)年6月、ノルマンディーに上陸したイギリス軍戦車部隊はティーガーIの待ち伏せを受けたと報告しますが、戦闘後の遺棄戦車にティーガーIはなく、後にドイツ軍の記録と照合してみても、該当地域には配置されていませんでした。同じような例は東部戦線のソ連軍でも見られます。
このような事例は、「ティーガー・ファントム(ティーガーの幽霊)現象」と呼ばれることがあります。ティーガーの恐怖が広まるにつれ、対峙した兵士は実際よりも多くのティーガーIが戦場に存在すると思い込む傾向にあったのです。戦闘中の迅速な判断が求められる状況では、「大きな戦車=ティーガーI」と単純化されるケースもありました。また、「ティーガーIと交戦した」と報告することで、自らの功績を誇張しようとした可能性すらあります。
この「ファントム」(幽霊)の正体の多くが「シュルツェン」付きのIV号戦車でした。シュルツェンとは、砲塔や車体側面に取り付けられた追加装甲板であり、スカート装甲ともいわれます。この装甲板によってIV号戦車のシルエットは大きく角ばったものとなり、遠目ではティーガーIのように見えることがありました。戦場の混乱の中で、この特徴が誤認を生んだようです。
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