米軍が80年越しに返還!「激レア日本戦車」が里帰り ポイントは攻撃力を増した新砲塔

2025年3月下旬、太平洋戦争で日本軍の主力戦車であった九七式中戦車(チハ)が横浜港に到着し、80年ぶりの里帰りを果たしました。ただ、この「チハ車」、これまで国内で保存展示されている同種の車両とは大きな違いがありました。

「新砲塔チハ」のレストア 目途は?

 今回、里帰りした九七式中戦車(チハ)は、戦後長らくアメリカ海軍の所有物、すなわち米国有資産として、テキサス州にある太平洋戦争国立博物館で保管されてきました。

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海外でレストアされ走行可能になってから再び里帰りした、御殿場のNPO法人所有のオリジナルの九五式軽戦車(ハ号)。今回帰国した九七式中戦車も、こうしたレベルでの動態保存を目指してレストア作業が行われる予定である(吉川和篤撮影)。

 そのようななか、静岡県御殿場市で活動するNPO法人「防衛技術博物館を創る会」(小林雅彦代表理事)が同戦車の存在を知ったことで、日本に返還してもらえないか交渉をスタート。数年に渡る粘り強いやり取りの結果、最終的に所有権の譲渡が認められ、日本への帰国が実現したのです。

 しかし、15t近い重量物を海上輸送する費用はそれなりに掛かるうえ、昨今の為替レートの変動と国際情勢の変化による物価高騰によって算段が狂い始めます。加えて、予定していた港が使えなくなり、米本土を陸路で輸送する必要が生じたなどで、見積りは交渉を始めた頃より値上がりして1000万円を超えるようになりました。

 それでも、今年(2025年)2月に終了したクラウドファンディングで全額の集金に成功しており、いかに日本国内で新砲塔チハの帰還を待ち望む声が大きかったか、知らしめることにもつながりました。

 現在、「防衛技術博物館を創る会」は、戦後に民間転用された九五式軽戦車ベースの更生戦車(ドーザー車)のレストアを実施中です。また、同NPOはすでにレストア作業を終えた九五式軽戦車や九五式小型乗用車(くろがね四起)などの実物車両も所有しており、将来は、御殿場市に建設を予定している「防衛技術博物館(仮称)」での動態保存と展示を目指しています。

 今回、里帰りした九七式中戦車(チハ)は幸いにもオリジナルのエンジンや変速機などの走行装置が車内に残っています。また、操縦席周りのレバーやペダル類など欠落した部品の再生、さらには法律の絡みでアメリカに残された47mm戦車砲のレプリカ製作も含めて、3年程のレストア作業で復活する予定だそうです。

 とはいえ、これら作業には原資が必要です。そこで現在、前出のNPO法人では、毎月500円や1000円の支援を行うマンスリーサポーターを募集しています。もし、レストアがうまくいけば、再び走れるようになった九七式中戦車改(新砲塔チハ)の力強い姿を間近で見られるようになるかもしれません。

【画像】エンジン残ってる! 国内唯一「九七式中戦車改」のディテールをイッキ見

Writer:

1964年、香川県生まれ。イタリアやドイツ、日本の兵器や戦史研究を行い、軍事雑誌や模型雑誌で連載を行う。イラストも描き、自著の表紙や挿絵も製作。著書に「九七式中戦車写真集」や「イタリアの中戦車・重戦車写真集 」、「イタリア軍写真集」など。

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