大阪万博で“正念場?” JR大赤字ローカル線、異例の増発で「来て!」 国鉄時代からの宿題

多くの人が訪れる大阪・関西万博を誘客のチャンスととらえ、利用促進につなげるため、加古川線の赤字区間で増発が実施されます。40年前の国鉄時代に廃止を“免れた”区間ですが、今回が正念場となるかもしれません。

やっと電化!したけども…

 県や関係市町は、地上設備費45億円の一部を負担することでJRを説得し、2002年から加古川線全線の電化工事が始まります。沿線自治体は、JR西日本へ30年間無利子貸付をした上で、利用促進を図るべく駅舎改築、駅前広場の整備、パークアンドライドの推進に努めました。

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電化初日の加古川線。県や地元市町も財政支援した(森口誠之撮影)

 2004年12月に電車の運行が始まり、加古川~粟生間は朝ラッシュ時9本から13本に増発され、加古川~西脇市間で平均5分短縮されました。

 ただ、線内各駅(日岡~久下村)の乗車客数は電化翌年の2005年度で1日6185人、2010年度で5872人……と低迷します。2019年度には1日6178人まで回復しますが、電化前に目標とした「年300万人」(1日8219人)には程遠いです。

 特に新西脇~久下村間各駅の乗車客数は電化前から1日あたり100人前後です。西脇市で鉄道利用の主体となる高校生の数は1995年比で約6割。今後も減少が見込まれます。

万博が最大のチャンス? いや、崖っぷち?

 そして、コロナ禍の2020年度、西脇市~谷川間の輸送密度は215人に落ち込みます。JR西日本は兵庫県などに「地域公共交通の将来像を共に考えたい」と協議を要請し、2022年にJRと関係自治体の集まる「JRローカル線 維持・利用促進検討協議会」が設立されます。

 県や西脇市、丹波市、JR西日本などは、2023年度以降、ワーキングチームを作り、利用促進に取り組みます。

 西脇市は通学定期券の購入補助事業と自転車の無償貸出などを始め、サイクルトレインやハイキング、スタンプラリー、タレントのトークショーなどイベントを実施しました。花火の日は1500人近いJRの利用がありました。

 さらに一部の関係者や市議は「大阪・関西万博が、加古川線誘客の最大のチャンス」「今こそ、日本のへそ公園駅を起爆として、まちおこし」と主張し、それらの意見が今回の増発につながりました。

 市は、万博参加者向け団体ツアーで加古川線を利用する場合、上限10万円を支援する施策を展開します。JR西日本もデジタルパス「ぶらり加古川線tabiwa 1 Dayパス」(1200円)を発売しています。

 一方、JR西日本神戸支社長は2024年7月の会議で「(万博の閉幕時点で)加古川線の利用の増加に向けた勢いが認められない場合には、いわゆる存廃の前提を置かずに、在り方の議論の開始に応じていただきたい」と発言し、西脇市長も丹波市長も容認しました。県は、今回の事業で鉄道のあり方を議論するためのデータ収集をしたい考えです。

【ここです!】万博期間中に増発する「JR大赤字線区」(地図/写真)

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