「東武アーバンパークライン」はすっかり定着? 今後も続く野田線の“劇的イメチェン” 東武はなぜ注力するのか

野田線(東武アーバンパークライン)は、東武本線(伊勢崎線・日光線など)、東上本線に次ぐ「東武第三の幹線」といえる路線ですが、東京に乗り入れず、新型車両も投入されず……と、いわば地味な存在でした。しかしここ最近、劇的にサービスが向上しています。野田線で何が起こっているのでしょうか。

伸び代がある野田線は今後も変化が続く

 しかし2000年代に入ると都心回帰が始まり、首都圏は都心30kmを境に人口増加が続く東京圏と、人口減少が始まる近郊に分かれます。その中で野田線は2012(平成24)年からコロナ前の2018(平成30)年まで通勤定期利用が7%増加しました。開発余地はほとんど残っていない伊勢崎線、東上線沿線に対し、野田線には大きな伸び代があります。

 ただ野田線の沿線開発は、これまでのものとは異なります。阪急や東急に代表される「王道」の沿線開発は都心から郊外に伸びる放射線ですが、野田線は放射線を横につなぐ環状線です。つまり沿線から都心へ一本では出られず、大宮、春日部、流山おおたかの森、柏、新鎌ケ谷、船橋などで他路線に乗り換える必要があります。

 野田線はこうした利用者に対応するため、2017年に春日部駅で編成を分割し、大宮と運河に向かう「アーバンパークライナー」を設定(2024年3月廃止)。また2020年3月に平日の大宮、柏、船橋の終電を15~30分程度繰り下げました。

 東武は2017年に策定したグループ中期経営計画で「春日部駅ジャンクション機能強化(東武スカイツリーラインと東武アーバンパークラインの相互乗り入れ強化によるアクセス性向上)」を掲げました。春日部駅周辺では連続立体交差事業が進んでおり、2031年度を予定する完成後は両路線の直通運転が拡大するものと思われます。

 また、さいたま市は2024年4月に「大宮グランドセントラルステーション構想」を発表し、野田線大宮駅を南側に60m移設し、ホームを増設する構想を発表しています。実現するとしても10年以上、先のことになりそうですが、野田線の変化はまだまだ続きます。

【写真】「リビング」をイメージした野田線新型電車を見る

Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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