「怪しい航空機接近」が多すぎる! 戦闘機スクランブルで疲弊する空自 “コスパ良い方法”を模索
近年、日本周辺で活動が活発化している中国軍機。なかでも無人機の飛来数が増えてきています。これに対して、航空自衛隊は有人戦闘機による緊急発進で対応していますが、費用対効果の観点から無人機による対応が検討されているようです。
過去にも同様の検討が…!?
実のところ、航空自衛隊は過去にもUASによる緊急発進を検討したことがあります。

それは、航空自衛隊が運用するF-15J/DJの後継機選定が取りざたされていたころの出来事です。合計213機が導入されたF-15J/DJのうち、110機は能力向上改修に適さない、いわゆる「Pre-MSIP機」でした。当時の安倍内閣の政治判断で、2018(平成30)年末にPre-MSIP機の後継機はF-35A/B戦闘機が導入されることになったのですが、政府と防衛省の一部には将来のパイロット確保が困難になることなどから、Pre-MSIP機の後継機は導入しないという考え方も存在していました。
航空自衛隊は、Pre-MSIP機の後継機が導入されないという最悪の事態をにらんで、当時の防衛大綱で定められていた戦闘機保有数の上限、いわゆる「定数」に入らない、ジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)のジェットエンジンを動力とするUAS「アベンジャー」を導入して、緊急発進の任に充てることを考えていたようです。
これが検討されていた2010年代半ばには、まだ中国のUASは現在ほど活発に活動していなかったので、おそらく情報収集機などの有人航空機を対象とする緊急発進を想定していたものと考えられますが、非対称目標に対する緊急発進にUASを使用するという考え方は合理的だと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。
とはいえ、航空自衛隊は2025年4月現在、緊急発進に適したUASを保有していません。
T-4練習機の後継機として名前が取りざたされているM-346やT-50などには軽戦闘機型が開発されていますので、F-15J/DJなどに比べて運用コストが低く、練習機との機種統一で運用コストの低減が見込めます。こうした軽戦闘機を当面の間緊急発進の任に充て、その間に緊急発進に適したUASの整備を行っていくという手法も、経済的な損失を極力抑えながら、領空の安全を確保する上で検討していくべきだと筆者は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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