機密のカタマリ 空自の最新鋭「空飛ぶレーダー」は“トイレ付き”確定!←なんで今までなかったの…?
自衛隊が運用する最新の早期警戒機E-2D「ホークアイ」。かねて“トイレとギャレーがある”と言われていましたが、初めてメーカーから明かされました。当たり前では、と思うかもしれませんが、この機種では決して当たり前ではなかったのです。
トイレがめっちゃ大事なワケ
早期警戒機のトイレ設置は、各国で乗員の士気を大きく向上させるものとなっています。

シンガポール空軍は1980年代前半にE-2Cを導入し、イスラエルのIAIがガルフストリームのビジネスジェット機をベースに開発した早期警戒機「G550CAEW」との交代が完了する2010(平成22)年まで、陸上の基地から運用していました。筆者は、2018(平成30)年に開催されたシンガポールエアショーにて、E-2CとG550AEWの両方でレーダーのオペレーターとして勤務していたシンガポール空軍の方に話を聞く機会を得ました。
筆者の「E-2CとG550CAEWの一番の違いは何ですか?」という質問に対して、「G550CAEWにはちゃんとしたトイレがあるから安心して用が足せるし、温かいの飲み物や食事も摂れるので、長時間の飛行任務におけるクルーの肉体や精神への負担がE-2Cに比べて少ないことだよ」と話しました。
搭載するレーダーなどの違いなどの話を期待していた筆者は、正直、少し面食らってしまったのですが、ひとたび飛びたてば長時間、軍用機の機内で勤務するオペレーターやパイロットが受ける負担は筆者が想像していたよりも大きく、その負担を軽減するための居住性の改善は大切なことだと、思い知らされたような気がしました。
早期警戒機に限った話ではありませんが、少子化により自衛隊の航空機搭乗員の確保はますます困難になっています。この課題を抱える先進諸国の軍隊では、運用する艦船や航空機の居住性を向上させ、勤務環境を改善してリクルートを有利にするとともに、熟練した要員に少しでも長く働いてもらおうという考え方がトレンドになりつつあります。
E-2Dへのトイレと簡易ギャレーの設置はオプションなので、設置にあたってはいくばくかの出費があったものと思われますが、現在E-2Dで勤務している搭乗員の方々の勤務環境を改善する上でも、また将来E-2Dの搭乗員を志す人たちに対するリクルートの上でも、防衛省・航空自衛隊の判断は極めて適切だったと筆者は思います。
Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)
軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。
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