米軍の「おじいちゃん爆撃機」に復権の兆し 東京―北京ひとっ飛びな「ビッグ核ミサイル」←これがキモ
米空軍の大型爆撃機B-52「ストラトフォートレス」は2025年現在、核兵器の運用が可能なのは現役の約半数にとどまります。しかし全機に核ミサイル運用能力を付与しようと考えているのだとか。時代に逆行しているとは言い切れないその動きとは。
エンジン換装しながら生き長らえるB-52
この現実を前に、アメリカは着実に戦略オプションの見直しを進めています。なかでも注目すべきが、B-52に再び核搭載能力を全面的に復活させるという計画です。核兵器(AGM-86)搭載能力を喪失したB-52を再び搭載可能に戻し、戦略爆撃機としての任務に回帰させようという動きが加速しています。

またアメリカ空軍ではAGM-86の後継となる新型の戦略核兵器AGM-181長距離スタンドオフ兵器(LRSO)の開発を進めています。これは、いっそう確実な航空兵器による核攻撃手段を実現しようと動いていると言えるでしょう。このような兵器を、全てのB-52に搭載可能とするのは、単なる近代化にとどまらず、アメリカの核抑止戦略の根本的再編を意味します。
2025年現在、数の面でより比率の大きい大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦搭載弾道ミサイル(SLBM)に対し、空中発射型の核戦力が再びその中心に躍り出る可能性を示唆していると言えるでしょう。
加えて、アメリカ空軍では新型爆撃機B-21「レイダー」を開発中ですが、この機体は現在のところB-1BとB-2を置き換える見込みであり、B-52はB-21と共に空を飛ぶ「戦略の二枚看板」として生き残る可能性が高くなっています。B-52はF130ターボファンエンジンへの換装を含む大規模近代化改修を受けており、寿命は少なくとも2050年代まで延伸される見通しです。
「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」と言ったのは、かつて日本を占領していたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)のトップであったマッカーサー将軍ですが、B-52は消え去るどころか、ますます存在感を増す状況です。
かつての冷戦の象徴は、来たるべき新冷戦の主役になりつつあると言えるのかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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