「こりゃ大修理だ…」博物館を悩ませた現存最古級の貨車 まもなくお披露目! でも残る課題、クリアの見通しは?
明治時代に製造された有蓋貨車の復元が、クラウドファンディングで資金を集めつつ行われました。ゴールデンウィーク期間に貨物鉄道博物館で展示予定ですが、どのような復元作業が行われたのか同館へ聞いてみました。
目標額達成も… 物価高の影響を受ける
どの部分を修復したのかについて、貨物鉄道博物館の担当者は「床下です。クラウドファンディングで資金を集めたことで、台枠の補修と塗装ができました」と回答。125年前に製造された珍しい台枠構造の見学も、可能となったといいます。

修復箇所の詳細は台枠(車両の土台にあたる部分)で、軸箱・軸箱守・担弾機(バネ)類は新たに製作したそう。苦労した点については、次のように話しました。
「実車の製作図面がないため、当時の同じような車両などの図面から想定して部材を設計しました。また、想像以上に台枠が劣化していたので、部材補修を行っています」
復元にあたっては、「123年前に地元四日市で製造された国内最古級の貨車を現役時の姿に!」というテーマで、クラウドファンディングが行われました。先述した通り、倉庫として利用されていた時代が長かったことで下回りが失われていたため、クラウドファンディングでは車輪をはじめそれを支える部品などの復元を行い、線路の上に載せることを目指しています。
目標額は300万円でしたが、最終的には約458万円が集まりました。しかし、物価高の影響を受けたことで費用がクラウドファンディングの支援額を大幅に上回ってしまい、現在は100万円以上の赤字になっているそうです。
なお、今回は連結器やブレーキ装置の復元は行われていません。これらの復元には、設計費や鋼材費、制作費など合わせて最低でも100~200万円は必要で、貨物鉄道博物館は引き続き支援を呼びかけています。
同館ではテワ1のほかにも復元を予定している貨車があり、旧ライジングサン石油タンク車のタ600が次回の候補とされています。テワ1と同じく、タ600も下回りの復元を目標としていますが、これには少なくとも600万円はかかると見込んでいます。
Writer: 柴田東吾(鉄道趣味ライター)
1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。
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