戦艦「大和」とタッグ組んだ傑作機【前編】この姿での展示は一年だけ! “主翼畳んだ姿にも” 将来ビジョンを名物館長に聞いた

広島県呉市に期間限定で開設されている「大和ミュージアムサテライト」に零式観測機の実物大模型が展示されています。戸髙館長いわく、1年後は展示の仕方が変わっているかもしれないとか。将来の姿についても語ってくれました。

乗員席の内部まで精緻に再現

 日本海軍では当初、艦隊決戦時の偵察、哨戒、索敵、弾着観測に使用する複座水偵として、1935年に制式採用した九五式水上偵察機の配備を進めていました。しかし、敵艦隊の上空を飛行するという任務の特性上、空母搭載機など敵機の妨害を受ける可能性があることから、空中戦もできる新しい機体を求めていました。

Large 20250503 01

拡大画像

「大和ミュージアムサテライト」の戸髙一成館長と零式観測機の実物大模型(深水千翔撮影)。

 こうした経緯で生まれたのが「零式観測機」です。寸法は全長9.5m、全幅11m、全高4mで、重量は2550kg。空冷エンジンの「瑞星」一三型を搭載し、最大速度は370km/hとなっています。武装は7.7mm機銃が固定式2基と旋回式1基を装備。爆弾は30kg爆弾2個か60kg爆弾2個の搭載が可能です。

 太平洋戦争中は戦艦「大和」などの主力艦だけでなく、特設水上機母艦から基地航空隊まで広く配備され、弾着観測に限らず偵察、哨戒、爆撃、防空、船団護衛といった多様な任務に用いられています。

「大和ミュージアムサテライト」に展示された「零式観測機」の実物大模型は操縦員席や、その後方の偵察員まで精緻に再現されており、機体脇に設置された階段に昇れば眺められるようになっています。そこからだと、再現された計器板やさまざまなレバー、機銃取り付け架などを見ることができます。

 さらに主フロートも単独で展示されています。同機は中央に主フロート、左右主翼下に折りたたみ可能な補助フロートが設けられています。

 ちなみに、90年ほど前の試作段階では、洋上で横風を受けて機体が横転する事故が発生しており、これを受けてフロートの容積増大や尾翼の改修などを実施。こうした試行錯誤の結果、水上機でありながら高い運動性能を兼ね備えた零式観測機のフロートが完成しています。

【画像】これが零式観測機のコックピット内部です

最新記事

コメント