あれ、この“釜”は…! 超人気駅弁からの「新業態&派生メニュー」東京で拡大する思い 「チャレンジしていきたい」
日本屈指の人気駅弁の製造元が、そのノウハウを活かし東京都心で飲食店を拡大しています。駅弁の看板を背負ったメニューが「どこかで食べた」記憶を呼び覚ます飲食店の数々。出店拡大の狙いを聞きました。
「釜めし以前」まで原点回帰の店も
荻野屋が京王電鉄笹塚駅(東京都渋谷区)に直結した商業施設「京王クラウン街笹塚」に2024年8月8日開業した「おこめ茶屋 米米-めめ-」も、原点回帰を体現した店舗です。

1885年、おにぎり2個とたくわん2切れを竹の皮に包んだ弁当を横川駅で売り出したのが荻野屋のルーツです。「米米」の主力商品のおにぎりは「峠の釜めし」と同じように長野県・安曇野産のコシヒカリを中心にブレンドしており、茶めしも用意しました。
浦野部長は「荻野屋にしかできない茶めしにフィーチャーしながらも、白飯のおにぎりを求める顧客も多いかなと思ったため、開店当初は全体の約3分の2を茶めしのおにぎりにした」ものの、実際の売れ行きは「茶めしのおにぎりがほとんどを占めている」と打ち明けました。中でも「峠の釜めし」の味わいに似ている「鶏ごぼうおにぎり」などが人気商品になっています。
他にも東京都心部では、昼は定食、夜は群馬県と長野県を中心とする地酒とおつまみを提供する飲食店として「荻野屋 弦 有楽町」をJR有楽町駅の高架下に、「おぎのや食堂」をJR神田駅の高架下に展開するなどしています。
浦野部長は「『峠の釜めし』だけに頼っていてはいけないというところもあり、歴史を守ると同時に『峠の釜めし』以外の荻野屋の魅力を伝えていかないといけない」とした上で、「情報発信力が高い東京での新業態を通じ、新しい荻野屋を知っていただくことに注力していきたい」と強調しました。
今後もさらに、「求められれば開発した業態の多店舗展開もしたいし、荻野屋が持つノウハウやリソースを使える新業態を出店する機会があれば積極的にチャレンジしていきたい」と意気込んでいます。
荻野屋は4代目社長の故・高見澤みねじ氏らが横川駅を通る列車に乗った旅行者の要望を聞き、それまでの駅弁の常識を覆す土釜入りの「峠の釜めし」を開発して大ヒットさせた歴史を持ちます。東京に出店した新業態からどのような人気メニューが生まれるのか、「積極的なチャレンジ」の行方が楽しみです。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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