アメリカ製戦闘機もエンジンに泣いた!?「偉大なる凡作」と「WW2最優秀」の意外な共通点とは
第2次世界大戦中に多用されたアメリカ製戦闘機のP-40「ウォーホーク」とP-51「マスタング」。前者は「偉大なる凡作」、後者は「アメリカ最優秀」と評価は真逆ですが、大きな共通性をもっているそうです。
「やられメカ」の汚名を返上するまでに性能アップ!
乗用車は、第2次世界大戦中は生産が禁じられたため、その生産ラインが空いていたからです。こうして同社は1942年2月から「マーリン」の量産を始めますが、このエンジンには、2段2速過給機が備えられており、高高度においても性能が低下しません。しかも、パッカード社での量産も軌道に乗ったことで、アメリカ製戦闘機に同エンジンを回す余裕も出るようになりました。

そこでP-40とP-51のアリソンV-1710をパッカード社製「マーリン」に換装したところ、両機ともこれまで以上の高性能を発揮するようになったのです。
その結果、P-51は冒頭に記したごとく「アメリカ最優秀戦闘機」と称される傑作機にまで昇華しました。また、太平洋戦争開戦時には零戦(零式艦上戦闘機)や一式戦闘機「隼」の餌食だったP-40も、元来頑丈な機体であることに加えて、エンジンを「マーリン」へ換装したことで大幅な性能向上を果たし、それまでとは打って変わって日本製戦闘機に負けない優秀機へと変貌を遂げたのです。
なお、これにはアメリカ軍の戦闘機の運用法が、それまでの戦訓によって格闘戦能力に優れた日本機のペースに巻き込まれず一撃離脱戦法に徹するようになったこと、加えて日本側の熟練パイロットが戦争の長期化によって失われたことで形勢が変わりつつあったという情勢の変化も影響しているのは言うまでもありません。
P-40戦闘機というと、大戦前半における「やられメカ」のイメージがいまだに根強いので、このように大戦後半に劇的な性能向上を果たし、むしろ日本軍機を苦しめたというのは意外なのではないでしょうか。
また、こうしたP-40やP-51の性能向上を鑑みると、飛行機にとって、エンジンがなによりも重要というのもよくわかります。
なお、アリソンV-1710の名誉のために付け加えておくと、アメリカ生まれの同エンジンにも、のちに2段2速過給機が装備され、性能が格段に向上しています。
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。
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