トランプ政権 米空軍の「空飛ぶ司令塔」更新プロジェクトに大ナタ! 新型機の提案で迷走の模様

アメリカ空軍は2025年現在、老朽化したE-3早期警戒管制機の後継としてE-7の導入を計画しています。しかし、トランプ政権はE-7ではなく米海軍がすでに運用しているE-2Dを提案する模様とか。ただ、実は大きな問題をはらんでいるようです。

「E-2DじゃE-3の後継にならない!」そのワケ

 E-7は、ボーイング737を母体とする比較的新型の空中早期警戒機で、既にオーストラリア、韓国、イギリスで採用されています。胴体上部に固定式フェイズドアレイレーダー「MESA」を搭載し、機体内部に10名のオペレーターステーションを抱えるこの機体は、まさに「ポストE-3」として期待されていましたが、このたびE-7導入の全面見直しに踏み切ることとなりました。

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E-2D「ホークアイ」早期警戒管制機。アメリカ空軍への導入が見込まれるが能力的にはE-7やE-3といった大型機には管制能力において遠く及ばないと考えられる(画像:アメリカ海軍)。

 代替案として浮上しているのが、アメリカ海軍などが運用する艦載用の早期警戒機E-2D「ホークアイ」を空軍仕様にするプランです。ただ、E-2Dは本来、空母から発艦する前提で設計された機体のため、行動半径や滞空時間などの性能はE-3やE-7には到底及びません。またプロペラ機のため速度も遅く、そして何より問題なのが、空母搭載用として機体をコンパクトにした結果、機内にオペレーターが3名しか収容できないという点です。

 これを「E-3の後継」とみなすのは、さすがに無理があるでしょう。E-2Dは一部任務を代替できるに過ぎず、特に広域における航空管制機能、すなわち複数の戦闘機部隊の同時指揮や戦域全体の航空状況の把握においては能力的に大きな制約があるのは間違いありません。E-2Dの管制能力は、単純に考えてもE-7の3分の1以下であるため、そのまま制御できる戦闘機の数にも限界があるでしょう。

 AWACSを空中のレーダーステーションとして、それに専任させ、指揮管制は地上で行ったり、もしくは「スターリンク」のような全地球を覆う低軌道コンステレーションを活用した宇宙配備型早期警戒システムをはじめとした新たなシステムを組んだりするのであれば、E-2Dでもよいかもしれません

 しかし、E-3やE-7と同じ運用法をE-2Dで行おうとするのは物理的に無理です。逆に言うと、E-2Dに頼らざるを得ないというのは、アメリカ空軍が「情報優位の空戦」から後退する兆しなのか。それとも、従来の固定観念から脱却し、より柔軟で革新的な戦域管理の構想へと移行するための苦渋の一手なのか、いずれにしても続報に注目するしかないでしょう。

【全然違う!】E-7とE-2、双方の機内の広さを見比べ(写真)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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