嘉手納基地にドローン攻撃「撃ち落します」 ガチのミサイルにはどう対応? 部隊トップに直接聞いてみた!

近年とくに軍事的緊張が高まる日本周辺に“にらみ”を利かせているのが、世界最強ともいわれるアメリカ空軍の第18航空団です。その役割や重要性について伺うべく、沖縄県の嘉手納基地に所在する同部隊の司令官にインタビューしました。

ウクライナ戦のようなドローン攻撃の脅威は「もはや驚くことではない」

 嘉手納基地に展開する各種航空機にとって、最も重要なのは基地の安全性です。もし基地が突然攻撃を受けてしまえば、いくら高性能な戦闘機といえども地上にいる間は抗うすべがありません。

 その観点からすると、最近ウクライナの特殊部隊がロシア領内で実施した小型ドローンによる空軍基地への攻撃が思い起こされます。こうしたドローンの脅威は世界的に高まっていると、エバンス准将は語ります。

「ウクライナ戦争におけるドローンの活用を考えると、これはもはや驚くことではありません。我々は世界各地で、ドローン攻撃が非常に効果的であることを確認しています。これは嘉手納基地に限った話ではなく、アメリカ本土の空軍基地や海軍艦艇に関しても、ドローンの脅威が高まってきています。

 したがって、ドローンは全世界の基地にとって現実的な脅威となっており、各国の基地司令官たちはこの問題に真剣に取り組んでいます。嘉手納基地にも、能動的および受動的な複数の対ドローン防御システムを導入しています。作戦上の理由によりその詳細には触れられませんが、我々としてはこの脅威を極めて重要と認識しており、各軍種が検知・迎撃システムの開発に力を入れています」

ガチのミサイルにはどう対応?

 一方で、基地に対する脅威はドローンだけではなく、むしろ大規模な国家間戦争の場合には敵の巡航ミサイルや弾道ミサイルによる攻撃の脅威が高まります。

 そこで、アメリカ空軍ではこれに対抗すべく、「迅速戦力展開(ACE)」と呼ばれる運用構想を数年前から進めています。その内容について、エバンス准将は次のように説明します。

「ACEは、厳密な作戦計画というよりも、運用能力・構想です。ご指摘の通り、嘉手納基地は中国や北朝鮮が保有する多くの兵器の射程圏内にありますが、そのような環境でも戦力を生き残らせるため、機動的かつ分散的な運用が鍵となります。

 かつては、施設を強化・要塞化することで敵の攻撃に耐えるという考え方が主流でした。たとえば韓国にはそうした強化施設が数多くあります。しかし、現代の兵器は精度が非常に高く、要塞化だけでは防ぎきれません。ですので、現在は施設を動かし、分散させ、もし一部が破壊されても他の場所で同じ任務を継続できるような体制が重要とされています。

 ACEでは、航空機だけでなく、通信や支援機能を含む航空戦力の運用全体が移動および分散の対象です。仮に嘉手納基地が攻撃を受けたとしても、残りの部隊が即座に別の拠点から任務を継続できる能力を確保することが求められています。そのために我々は、分散運用、攻撃後の迅速な滑走路再整備能力、通信体制の確保など、さまざまな訓練や準備を行っています。

 我々としては、日本の航空自衛隊基地を含めたあらゆる場所に展開を命じられても、即応できるように準備しています。すなわち、ACEとは『場所に依存しない即応力』を意味しているのです」

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Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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