「航空大国ロシア」復権なるか 次々登場の新旅客機、その実力、そして勝算は

桁が違う「二大巨頭」 ロシアとMS-21が入り込む隙、あるとすれば…

 イルクート社とロシアの挑戦を受ける欧州のエアバス社、アメリカのボーイング社は、どちらもMS-21と同クラスで、その対抗馬となる次世代のナローボディ旅客機を開発しています。

 エアバス社は2014年、A320neoの初飛行を実施、すでに航空会社へ引き渡され就航しています。受注はすでに5000機が目前であり、2019年には月産60機となる予定です。他方、ボーイング社も2016年1月、737MAXの初飛行を実施しており、2017年にも就役する見込みです。こちらも受注は3000機を超え、同じく2019年には月産57機まで拡張される予定。いずれもMS-21とは、すでに文字通り桁が違う受注を集めており、この差は今後さらに大きくなるでしょう。

 MS-21がこれらに勝ちうる可能性はありません。しかしながらコストは競合機に対しておよそ1割ほど安価になることを見込んでおり、初期投資を抑えられる利点があります。実用化後にサポートの実績を積み上げ、信頼を獲得することによって、さらに受注を伸ばすことは十分に可能です。

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エンブラエル社のE-Jet E2シリーズ最新鋭機、E190-E2。2016年5月、初飛行に成功した(写真出典:エンブラエル)。

 同クラスの旅客機市場には、中国の航空機メーカーである中国商用飛機社もC919で参戦する予定で、さらにボンバルディア社(カナダ)のCシリーズ、エンブラエル社(ブラジル)のE-Jet E2シリーズなども存在。今後エアバス社、ボーイング社に次ぐ“第3位の座”をめぐる争いが苛烈になると予想されます。

【了】

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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