「これ“奈良のシカ”ですよ」ヤベエ!! 超人気オフロードバイクの“やっちゃった”秘話とは? ヤマハ「セロー」
1985年に新ジャンルのオフロードバイクとして発売されたヤマハ「セロー」。オフロードモデルの入門マシンとして知られた一方で、実は本格的なアイテムも多数装備した“ホンキ仕様”の1台でした。
コンセプト変更? スタイリッシュに変身した「セロー250」
初代登場から20周年にあたる2005年、セローは最大の特徴である“扱いやすさ”はそのままに、排気量を250ccにアップして後期型へとフルモデルチェンジしました。「セロー250」はエンジンが大きくなった一方で、さらなる軽量化にも取り組み、結果的に225ccモデルよりも、はるかに乗りやすいセローへと生まれ変わったのでした。
ただし、大幅に変更されたデザインについては、筆者は個人的に“違和感”を覚えました。250ccモデルは先鋭的でスタイリッシュなデザインになった反面、225ccモデルにあった「洗練されすぎない、どこかアナログ的な親しみやすい雰囲気」は感じられないものになっていたほか、タンクの“カモシカ”も姿を消していました。
もちろんコレはコレでカッコよく、たとえばモタード風にカスタムするのであればドンピシャに仕上がるだろうと感じました。しかし、当時の女性ライダーや初心者から見れば敷居が高そうな雰囲気のデザインであったとも思えます。もしかしたらモデルチェンジを機に、ヤマハがターゲットユーザーの“再構築”を図ったのかもしれません。
先鋭化した後期型セローですが、市場からは相応の支持を受け、マイナーチェンジを重ねつつ更に進化していきました。2012年モデルでは、シュラウド(ボディのカバー)のグラフィックにカモシカの絵柄が復活。「カモシカがモチーフである」と言われなければ気が付かないほど抽象的ではありましたが、前期型時代からのファンには嬉しいエピソードでした。
しかし、2018年のマイナーチェンジモデルを最後に改良は止まり、セローは2020年に惜しまれつつも生産終了となりました。
225ccから250ccへと大きく変わりつつも、35年もの長きにわたり愛され続けたセロー。ヤマハの惜しみない開発力と、そして何より「バイクユーザーを増やそう」とした努力の歴史が詰まった、偉大なるロングセラーモデルでした。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
コメント