日産のネオクラシックな「パイクカー」が有名ですが「パイクバイク」もあったんです。スズキに! なぜ短命に終わった?
1992年にスズキが発売した250ccの「SW-1」は、従来のバイクデザインのセオリーを破る、独創的なモデルでした。1990年代の“ネオクラシック”人気の立役者でもあるSW-1とは、いったいどのようなモデルだったのでしょうか。
実は中身はモトクロッサー? 走破性も使い勝手もハイレベル
SW-1は一見、スクーターのようにも見えるデザインですが、実はシーソー式チェンジペダルを持つ、れっきとしたシングルスポーツ。意外なことに、市販型のエンジンはモトクロッサーである「DR250」譲りで、おとなしめのセッティングにはなっていたものの、充分な走破性も兼ね備えた1台でした。

それでいて、SW-1は“オイル臭さ”を感じさせず、ファッション感覚でバイクライフを楽しめるのが持ち味でした。水たまりなどを踏んで服が汚れないように装着されたレッグシールドなどは、それを象徴するパーツと言っていいでしょう。
また、特筆すべきはボディカバーの各部に備えられた収納ボックス。通常のバイクにおけるガソリンタンク部分には小物が収納でき、両サイドのボックスには、ヘルメットなどを収納することができました。さらに、ボックス内にはKTC製のツール類も標準で装備。細部に渡るこういった配慮もまた、SW-1の評価を高めました。
短命に終わってしまったSW-1。その原因は
ところが、SW-1は致命的な欠点も抱えていました。それが新車価格で68万8千円という価格の高さ。当時のほかのモデルより3割以上高く、250ccとしては最高額クラスのプライスは販売面で大きなマイナスとなり、約2〜3年という短期間の販売でラインナップから姿を消しました。
しかしながら、日産の“パイクカー”が今も根強い支持を受けているのと同様、SW-1も中古車相場は高値の傾向であるほか、近年もSW-1をモチーフにしたアパレルが発売されるなど、現在もその魅力は多くの人々を惹きつけているようです。SW-1のオーナーズクラブも存在し、復刻を願う声も後を絶ちません。
他社にはない独創的なバイクを数多くリリースするスズキにとって、ある意味最も「スズキらしい」モデルの1台といえるSW-1。いつかリメイクマシンか復刻モデルとして、再び我々の目の前に現れることを願うばかりです。
Writer: 松田義人(ライター・編集者)
1971年、東京都生まれ。編集プロダクション・deco代表。バイク、クルマ、ガジェット、保護犬猫、グルメなど幅広いジャンルで複数のWEBメディアに寄稿中。また、台湾に関する著書、連載複数あり。好きな乗りものはスタイリッシュ系よりも、どこかちょっと足りないような、おもちゃのようなチープ感のあるもの。
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