「グリーン車を超えるグリーン車」が、なぜ“個室”じゃないの? 「それ本当に大変で…」 屈指の人気列車、想像だにしない“当初案”を聞いた

もうすぐ登場1周年を迎える観光列車「はなあかり」は、最上級クラスの“半個室”を、さながら「貸し切り美術館」のような空間にしています。着想した背景や、“個室”にしなかった理由を尋ねると、デザイナーは様々な“別案”があったことを打ち明けました。

やっぱり「個室にしたらどうか」の案もあった!

 川西さんは「『グリーン車よりも上級クラスを設定する』というのはJR西日本からの指示だった」と打ち明けました。開発中に新型コロナウイルスの感染が拡大したため、「ニーズが確実にあるコンパートメント(個室)の席にしたらどうか」との提案も実際にあったそうです。

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「はなあかり」の1号車のスーペリアグリーン車の半個室に飾られたアート作品(大塚圭一郎撮影)

 ただ、川西さんは「エアコンの個別空調を設けるのは本当に大変なため、高いパーティション(仕切り)で区切った空間を1両だけ造ることになった」と打ち明けます。こうして生まれたのが、1号車のスーペリアグリーン車でした。

 この車両の定員を20人にするという指示に沿い、「普通席ならば6席分の空間に2席を設ける割り付けが早々と決まった」。本革座席は背もたれが倒れないものの、長時間快適に過ごしてもらえるように「座る位置によって姿勢が変えられるなどの工夫などを施した」そうです。

「貸し切り美術館」構想すら別案があった!?

 半個室に決まった経緯を聞いたうえで、筆者は川西さんに、沿線各地の作品を収めたガラスケースについては「他の乗客からもより見えやすくし、それぞれ異なる作品を鑑賞できる位置にあったほうがより良かった気もします」と率直に申し上げました。

 すると、川西さんは「開発段階では、ガラスケースをフリードリンクバーにするアイデアがあったのですよ」と知られざるエピソードを教えてくれました。

 ひとつの案として「ホテルのスイートルームや、旅客機のファーストクラスやビジネスクラスの一部では飲み放題のミニバーを備えているように、ガラスケースに沿線の地酒やジュース、スナック菓子、飲食用の容器を備えておき、お客さんが自分で取り出して味わえるようにすることを考えていた」そうです。

 ところが手続きが煩雑になるとの慎重意見も出たため、川西さんは代替案として「地元の工芸品を車内に飾るというアイデアがもともとあったため、さまざまな工芸品をガラスケースに入れてじっくりとご覧いただくことになった」と明かしました。

【たしかにスゴい空間…!】これが「はなあかり」の「超グリーン車」です(写真)

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