「グリーン車を超えるグリーン車」が、なぜ“個室”じゃないの? 「それ本当に大変で…」 屈指の人気列車、想像だにしない“当初案”を聞いた

もうすぐ登場1周年を迎える観光列車「はなあかり」は、最上級クラスの“半個室”を、さながら「貸し切り美術館」のような空間にしています。着想した背景や、“個室”にしなかった理由を尋ねると、デザイナーは様々な“別案”があったことを打ち明けました。

「花より団子」じゃないんだよな~

 長距離列車「WEST EXPRESS 銀河(ウエストエクスプレス ぎんが)」や、2025年のブルーリボン賞に輝いた特急「やくも」の273系などを手がけてきた川西さんは、地域共生のフラッグシップ(旗艦)列車を目指した「はなあかり」が「地域の皆さんが参加したくなるモチベーションを持ってもらえるのは何だろうかと考えた」と振り返ります。着目したのは「花」でした。

「お花を集めて、お花畑のような車両を走らせたらお客様が集まってくださると思い、『花』をテーマにすることに提案した」と打ち明けます。運行時には「沿線の保育園、幼稚園の子どもたちが近くに咲いているシロツメクサといった野花を摘み、乗客一人一人に渡すような人々の温かさが伝わるような列車になってほしい」との願いを込め、車内の壁際に花を飾る一輪挿しをしつらえました。

 車体色もこの「花」のコンセプトが貫かれています。奈良時代から伝わる檳榔子染(びんろうじぞめ)色をまとった車体にも、テーマとなる花や草のイラストを金色で施しました。

 川西さんが明かした興味深い開発秘話の中でも、筆者が特に関心を抱いたのは「幻のフリードリンクバー構想」でした。筆者のような「花より団子」の乗り鉄は、もしも実現していれば、乗車したいという意欲がぐんと高まっていた気がします。しかしながら、「花」をテーマにした「はなあかり」という名称の列車であることに鑑みると、沿線の工芸品やアート作品を愛でる「貸し切り美術館」の方がコンセプトに合致しているのかもしれません。

【たしかにスゴい空間…!】これが「はなあかり」の「超グリーン車」です(写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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