F-15戦闘機を“バズらせた”「中東の皆兵国家」の生存戦略とは? 制空戦闘機→戦闘爆撃機への改造は自衛隊も実行中!

開発元のアメリカに次いで世界で2番目にF-15「イーグル」戦闘機を導入したイスラエルは、比較的早い段階で戦闘爆撃機への改造に着手しました。その流れは30年遅れで日本も行っています。

30年遅れでイスラエルと同じ道たどる日本/自衛隊

 イスラエルは国土が狭小で、かつ海に面した西側を除く3方は敵国に囲まれています。加えて敵の拠点や戦線が国境から数十km圏内に存在するため、航空機には必然的に多用途性が要求されました。こうして1990年代に実施されたのが「バズ2000」近代化改修でした。

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JDAM GPS誘導爆弾を搭載したF-15D「イーグル」。ストライクイーグルのような全天候・夜間におけるターゲット能力を持たないが、搭載力はほぼ匹敵する(画像:イスラエル空軍)。

 ちなみに、「バズ」とはイスラエルにおけるF-15の愛称であり、その改修は制空戦闘機を「ストライクイーグルに比肩する戦闘爆撃機」へと進化させる野心的な試みでした。

「バズ2000」では、イスラエル製電子戦システムや航法・攻撃用アビオニクスが搭載され、これにより独自開発した精密誘導爆弾「スパイス」や、長距離スタンドオフ兵器「ポパイ」などの運用能力が付与されています。これにより、従来の制空戦闘機では想定し得なかった戦略目標への深奥打撃が可能となりました。

 結果として、イスラエル空軍のF-15は迎撃戦闘機という役割を超え、遠方の核関連施設や指揮統制拠点への先制攻撃に投入できる「戦略的多用途プラットフォーム」へと変貌しています。実際、近年の中東作戦においてF-15「バズ2000」は対地攻撃任務に積極的に投入され、その有効性を立証しています。

 興味深いのは、この「制空戦闘機の爆撃機化」という発想が、今日の日本におけるF-15J改修と近似している点でしょう。

 航空自衛隊は2025年現在、F-15JSI(Japan Super Interceptor)改修を進めており、これにより従来は空対空任務専用であったF-15Jに精密誘導兵器の運用能力を付与しつつあります。

 その背景には、これまでF-2やF-35に依存してきた対地攻撃任務を分担させ、戦力運用の柔軟性を高める狙いがあります。20年以上前に制空戦闘機を「多用途戦闘爆撃機」へと転じさせたイスラエルの発想は、日本の動向とも重なると言えるでしょう。

 F-15シリーズは累計1500機以上が生産され、初飛行から半世紀を経てもなお第一線で活躍を続ける稀有な存在です。その背景には、機体性能の完成度の高さに加え、各国が自国の戦略環境に応じて柔軟に改修を施し、運用概念を更新し続けてきた事実があると言えるでしょう。

 その先駆けといえる象徴的な事例こそが、イスラエルの「バズ2000」です。制空戦闘機を戦略的打撃力へと転換させたその発想は、F-15という機体の多用途性を引き出し、新たな地平を開いたと見ることができるのではないでしょうか。

【日本版「バズ2000」か?】自衛隊向け「スーパーイーグル」F-15JSIです

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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