「無人の潜水艇」に「AI魚雷」 日本とも連携する米の“大物”防衛スタートアップ企業とは? 台湾の展示会で注目

台湾で開催された防衛展示会TADTEで、アメリカのある防衛スタートアップ企業が大きな存在感を示していました。VR技術を広めた立役者が設立した同社はいま、無人装備の分野でアメリカ本国において急伸、日本にも連携を広めています。

飛ぶ鳥を落とす勢い?

 その後もアンドゥリルはアメリカ空軍の戦闘管理システムなどのソフトウェアを手がける一方で、無人防衛装備品の開発にも進出しています。

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アンドゥリル創業者パルマー・ラッキー氏(左)とMetaのマーク・ザッカーバーグ氏。両者は共同で米軍のXR導入支援を表明している(画像:Anduril)

 アンドゥリルが自社で開発したUAS(無人航空機システム)の「ゴースト」は、イギリス海兵隊から高く評価されました。この評価に自信を得たアンドゥリルは2021年、アメリカ軍やNASA(アメリカ航空宇宙局)などからの契約を得てUAS(無人航空機システム)の開発を手がけていた企業「エリアI」を買収しました。

 同社の持っていたUAS開発技術を得て、アンドゥリルの無人装備品開発はさらに加速。2025年3月には同社の提案がアメリカ空軍のCCA(共同交戦航空機)に採用され、同空軍からYFQ-44Aとして採用されるに至っています。

台湾、そして日本にも関係構築

 アンドゥリルはアメリカ軍、アメリカ政府向けにソフトウェアやシステム、無人装備品などの供給を手がける一方で、アメリカ以外の国の企業や研究機関との共同研究や共同開発も積極的に進めています。

 2025年6月にはドイツの大手防衛装備品メーカーであるラインメタルと、ヨーロッパ向けの自律型航空機システムおよび先進的な推進技術を共同開発する戦略的パートナーシップを締結しています。

 台湾の中山科学研究院との共同開発・研究がいつごろから行われていたのかは判然としませんが、今回のTADTEでも低コストの巡航ミサイルや、大型無人潜水艇、AI(人工知能)技術を取り入れた魚雷などの展示が行われています。アンドゥリルと経営幹部は2024年に、台湾への防衛装備品売却を咎められて制裁を受けていますが、同社は意に介さず台湾への関与を進めていくようです。

 実のところアンドゥリルは日本への進出にも高い関心を示しており、2023年5月には住商エアロシステムなど日本の商社3社と、日本の安全保障分野における協業の覚書を、同年7月には防衛省との間で、海上自衛隊が同社製品を活用した指揮統制における実証に向けた契約を、それぞれ締結しています。

 現時点でアンドゥリルの製品やサービスの採用は、この一例だけのようですが、同社の持つシステムと無人装備品の技術は、日本の防衛力を高める上で必要だと筆者(竹内修:軍事ジャーナリスト)は思いますし、今後はロッキード・マーチンなどと同様、日本にとって馴染みの深いアメリカの防衛企業になっていくのではないかと思います。

【「幽霊」ドローンって?】これがアンドゥリルの無人装備です(写真)

Writer:

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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