爆撃機が戦闘機みたいに“ミサイル発射!?” 米で浮上の「空飛ぶ武器庫」改修案とは? 背景に中国の脅威

アメリカ空軍の次世代ステルス爆撃機「B-21 レイダー」を、全翼機型アーセナル(弾薬庫)機にする構想が浮上しています。爆撃機に戦闘機の役割を担わせようとするものですが、二つの要因がこのアイデアを後押ししています。

第二次大戦時にもあった「爆撃機を戦闘機に」案

 アメリカ空軍の次世代ステルス爆撃機「B-21 レイダー」に、新たな役割を持たせる案が注目を集めています。それはB-21を全翼機型アーセナル(弾薬庫)機(Flying Wing Arsenal Plane)にするという構想です。B-21のキャパシティーに多数の長射程空対空ミサイルを搭載し、遠隔発射支援で制空権を確保しようというものです。

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2025年9月11日、エドワーズ空軍基地に到着した2機目のB-21試験機。背景の倉庫内に最初のB-21試験機も見えている(画像:アメリカ空軍)

 爆撃機に戦闘機の役割を担わせようという発想は、新しいものではありません。約80年前、第二次世界大戦中にはアメリカでB-17爆撃機を改造した「YB-40」という機体がありました。もっとも積極的に空対空戦闘を仕掛けるというよりは、爆撃機編隊を護衛する役割でした。開発当時はP-51マスタングなどの長距離戦闘機は量産に入ったばかりで、イギリスからドイツまで爆撃機に同行できる護衛戦闘機がなく、ドイツの迎撃機を追い払うことに苦労していたのです。

 YB-40は爆弾の代わりに多数の機銃と弾薬を搭載し、味方編隊を火力で守ろうという発想でしたが、重装備による飛行性能低下で編隊の足を引っ張り、効果もあまり認められず短命に終わっています。「爆撃機は戦闘機の代わりはできない」という、ある意味当然の結果でした。

 21世紀に入って同様の役割の議論が再び蒸し返されるのはなぜでしょうか。YB-40は爆撃機編隊が自衛しきれないという切迫から生まれましたが、現代のB-21全翼機型アーセナル機には、技術的要因と安全保障環境変化という要因があります。背景にあるのは、中国空軍力の急速な強化です。

 もともとB-21は単なる爆撃機ではなく多用途機であるという発想が空軍関係者から提示されており、空対空バージョンについて議論はありましたが、アイデアレベルを出ませんでした。しかし中国の脅威が現実化し、アメリカ空軍がこれまでのような圧倒的な優位を保てなくなるという危機感が、このアイデアを具体化させました。

【イメージ図】これが「空飛ぶ弾薬庫型」のB-21です(画像)

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