同じ名前で130年!「福島駅」「郡山駅」が500km以上離れて存在するワケ “禁断のダブり”に歴史あり

鉄道会社の路線では、切符を発売する際などに混乱するため、基本的に同名の駅を作らないのが原則です。ただ、いくつか例外的に同一の駅名が別々の場所に存在するパターンがあります。代表的な2つを見てみましょう。

東大寺の古文書まで登場した「郡山駅」改名騒動

 福島県で最も人口の多い郡山市の中心駅となっているのが、東北本線・東北新幹線の郡山駅です。開業は1887(明治20)年7月16日、日本鉄道の本線南区が黒磯から延伸した際の終点として設置されました。鉄道国有法により国有化された経緯は、東北本線の福島駅と同様です。

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福島県の福島駅(上)と大阪市の福島駅(下)の駅名標(咲村珠樹撮影)。

 一方、関西本線(大和路線)の郡山駅は、金魚の産地として全国的に有名な奈良県大和郡山市にあります。開業は1890(明治23)年12月27日で、当初は大阪鉄道(初代)の駅でした。ただ、大阪鉄道は1900(明治33)年に関西鉄道に吸収合併され、その後鉄道国有法に基づいて1907(明治40)年に国有化されています。

 駅は大和郡山市の中心部からやや離れており、駅前は静かな雰囲気です。市役所や郡山城址、商店街へは約1km離れた近鉄郡山駅の方が近く、利用客も近鉄の方が倍以上多くなっています。

 福島県と奈良県の郡山駅では、福島県の方に運ばれる貨物や荷物が誤って奈良県の方に到着してしまうということが相次いだといいます。そこで国有鉄道を所管する鉄道院では、取扱量の大きな福島県の郡山駅を優先し、奈良県の郡山駅を改称しようとしたとのこと。

 ところが、奈良県側の住民から「こちらの方が地名としては古い」として、東大寺に伝わる古文書を根拠に改称反対の陳情があり、改称が見送られたといわれています。

 ちなみにその古文書とは、平安時代末期に東大寺と薬師寺がそれぞれ所有する荘園の境界争いが発生した際、1162(応保2)年に国から出された裁決の文書(官宣旨案)です。この中に登場する「郡山」という地名が、現存する資料のうち奈良県の郡山を示す最も古い例なのだとか。

 改称が見送られ、並び立つことになった福島県の郡山駅と奈良県の郡山駅ですが、混乱するという問題はそのままです。そこで、福島県の方は所属する東北本線の「北」をとって「(北)郡山」、奈良県の方は所属する関西本線の「関」をとって「(関)郡山」と区別しています。

【写真】どっちだよ!? これが「関西の郡山」→「東北の郡山」切符です

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コメント

9件のコメント

  1. (環)福島→(北)福島の乗車券は単駅指定(旅客営業規則第86条ただし書き)を適用すれば、最短距離ではありませんが発行できますよ。記事の訂正が必要ですね。

  2. >福島県と大阪市を結ぶ「福島~福島」の乗車券は買うことができません。

    これは最短経路(福島~東北新幹線~東京~東海道新幹線~新大阪~東海道本線~大阪~大阪環状線~福島)での話で、「大阪市内」を一旦脱出して再度「大阪市内」に入る経路ならば購入可能です。

    その最短経路は、上記の新大阪から、新大阪~おおさか東線~久宝寺~関西本線~天王寺~大阪環状線~福島です。これは、久宝寺が「大阪市内」に含まれず、そのため上記の「大阪市内」一旦脱出に当てはまるためです。

    正に「上手の手から水が漏れる」。

  3. 「福島県と大阪市を結ぶ「福島~福島」の乗車券は買うことができません。」という説明は誤りです。

    JRの乗車券類は運送契約の約款である旅客営業規則(以下「旅規」という。)に基づいて発券されます。記事にもありますが,旅規第86条(特定都区市内にある駅に関連する片道普通旅客運賃の計算方)では,大阪市内の駅については「大阪市内の駅から片道の営業キロが200キロメートルを超える区間内にある駅との相互間の片道普通旅客運賃は、大阪駅を起点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する。」と規定されています。これが(環)福島駅ではなく大阪市内を発駅となる理由です。

    しかし,

    これは,ごくごく普通の経路「(環)福島(大阪環状線)大阪(東海道線)新大阪(東海道新幹線)東京(東北新幹線)(北)福島」を想定した場合です。JRの普通片道乗車券は,一筆書きで復乗にならない限り経路を自由に選択できます。そこで「(環)福島(大阪環状線)新今宮(関西線)久宝寺(おおさか東線)新大阪(東海道新幹線)東京(東北新幹線)(北)福島」の経路を指定すると,「(環)福島から(北)福島」の乗車券が発券されます。

    その理由は,旅規86条第1項にはただし書きにあります。「ただし、特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を通過するとき、又は特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るときを除く。」。上記の経路では,発駅は大阪市内の福島駅ですし,関西線の久宝寺駅は八尾市で大阪市内の駅ではありません。さらにおおさか東線で大阪市内の駅である新大阪駅に戻りますので,ただし書きの条件に該当します。そのため乗車券は「(環)福島から(北)福島」となります。

    このケースでは東京駅の近傍では旅規第70条の特例区間を経由しますので,運賃計算は「品川(山手線)池袋(赤羽線)赤羽」で計算することになります。

  4. 〜東北新幹線の郡山駅です。開業は1887(明治31)年〜

    となっていますが、1887年は明治20年なので修正をお願いします。

    • ご指摘ありがとうございます。

      記事を修正いたしました。

  5. (環)福島駅から(北)福島駅まで,最も営業キロが短い経路ですと,記事のとおり,普通片道乗車券は「大阪市内から(北)福島まで」で発券されます(旅客営業規則(以下「旅規」という。)第86条第1項)。

    しかし乗車する経路は旅客が自由に選択することができます。経路によっては,「(環)福島から(北)福島」までの乗車券が発券されます。これは,旅規第86条第1項ただし書きの規定によります。ただし書きの大意は,経路が大阪市内の駅から外に出て,再び大阪市内を通過する場合は除くとなっています。

    具体的には,次のような経路ですと(環)福島から(北)福島までの乗車券が発券されます。

    (1)(環)福島【大阪環状線】新今宮【関西線】久宝寺【おおさか東線】新大阪【東海道新幹線】東京【東北新幹線】(北)福島 営業キロ862.7キロ,運賃11550円,有効期間6日

    (2)(環)福島【大阪環状線】新今宮【関西線】天王寺【大阪環状線】京橋【JR東西線】尼崎【東海道線】新大阪【東海道新幹線】東京【東北新幹線】(北)福島 営業キロ865.9キロ,運賃11550円,有効期間6日

    (3)(環)福島【大阪環状線】大阪【東海道線】神戸【山陽線】西明石【山陽新幹線】新大阪【東海道新幹線】東京【東北新幹線】(北)福島 営業キロ942.0キロ,運賃12210円,有効期間6日

    なお,東京近傍は旅規70条の特例区間ですから,運賃計算は最短経路である「品川【山手線】池袋【赤羽線】赤羽」で計算します。(3)に関して,復乗しているように見えますが,新大阪・西明石間は旅規第16条の2第1項第1号の規定によって,在来線と新幹線が別の線路として取り扱われるため,このような経路は片道になります。

  6. 記事内で「福島→福島は買えません」という旨の紹介をされていますが、事実とは異なり、実際は買えると考えられます。

    例えば、

    福島→(路線名略)→新大阪→(おおさか東)→放出→(片町)→木津→(関西)→天王寺→(大阪環状)→福島

    とすると、旅客営業規則第86条のただし書き

    「特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るとき」により特定都区市内制度が適用されず、着駅が大阪市内ではなく(環)福島となるためです。

  7. 大久保駅……

  8. 福島県は重複駅が意外と多いですね。今回の他にも只見線の根岸駅と横浜市にある京浜東北線·根岸線の根岸駅は有名ですよね〜