同じ名前で130年!「福島駅」「郡山駅」が500km以上離れて存在するワケ “禁断のダブり”に歴史あり

鉄道会社の路線では、切符を発売する際などに混乱するため、基本的に同名の駅を作らないのが原則です。ただ、いくつか例外的に同一の駅名が別々の場所に存在するパターンがあります。代表的な2つを見てみましょう。

遠く離れた関西と東北に同名の駅が併存するワケ

 通常、鉄道会社の路線では、切符を発売する際などに混乱するため、同一の駅名を作らないのが原則です。

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東北新幹線と大和路線(写真ACの画像を編集部で加工)。

 とはいえ、駅が所在する地名はどうしても重なることがあるため、鉄道会社では、離れた場所に同一の駅名をつけないよう、新しく作る駅に「新」をつけたり(例:大久保駅と新大久保駅、横浜駅と新横浜駅など)、東西南北をつけたり(例:赤羽駅と北赤羽駅など)、旧国名をつけたり(栃木県の小金井駅と東京都の武蔵小金井駅など)と工夫しています。

 ところが、福島県福島市の東北本線と大阪市福島区の大阪環状線に「福島駅」、福島県郡山市の東北本線と奈良県大和郡山市の関西本線(大和路線)に「郡山駅」という同一駅名が、国鉄時代含めJRに移行した後も併存しているのです。なぜ例外的に、同一駅名のままなのでしょうか。

 まずは福島駅の場合です。福島県の県庁所在地、福島市に所在する福島駅は1887(明治20)年12月15日、日本初の私鉄である日本鉄道の本線南区(上野~仙台)が、郡山から仙台へと延伸したことにより開業しました。

 その後、日本鉄道は1906(明治39)年に施行された鉄道国有法による買収対象とされ、福島駅が所属する本線は国有鉄道の東北本線となり、戦後の日本国有鉄道(国鉄)発足、民営化を経てJR東日本の駅となりました。現在はJR東北本線・東北新幹線、奥羽本線(山形線・山形新幹線)のほか、福島交通飯坂線、阿武隈急行線が発着するターミナルとなっています。

 一方、大阪市福島区にある福島駅は、大阪環状線で大阪駅の隣にあります。元々は1898(明治31)年4月5日、大阪市の北西を走る西成鉄道の駅として開業しました。西成鉄道も鉄道国有法による買収対象となり、国有化後は西成線、そして1961(昭和36)年に城東線などを合わせて大阪環状線を形成するようになりました。

 新幹線をはじめとするJR線だけでなく、私鉄も発着する福島県の福島駅と比較すると、ホームはひとつだけと少々こじんまりとした高架駅です。

 では、なぜ2つの「福島駅」が併存したのでしょうか。そのきっかけは、前出の鉄道国有法です。日本鉄道は1906年11月、西成鉄道は同年12月に買収完了とほぼ同時期であるため、どちらを改名するか意見が対立したことも想像されます。ただ、東北本線と奥羽本線が分岐する交通の要衝である福島県の福島駅に対し、大阪市の福島駅は遠く離れた小規模な駅であり、この2つを利用者が混同することはないと考えられたようです。

 とはいえ、乗車券を発売する際に国鉄内で混同する恐れがあります。そこで福島県の福島駅には所属する東北本線を示す「北」をつけ「(北)福島」、大阪市の福島駅には所属する大阪環状線を示す「環」をつけ「(環)福島」と、それぞれ乗車券に記載することで区別しています。

【写真】どっちだよ!? これが「関西の郡山」→「東北の郡山」切符です

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コメント

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9件のコメント

  1. (環)福島→(北)福島の乗車券は単駅指定(旅客営業規則第86条ただし書き)を適用すれば、最短距離ではありませんが発行できますよ。記事の訂正が必要ですね。

  2. >福島県と大阪市を結ぶ「福島~福島」の乗車券は買うことができません。

    これは最短経路(福島~東北新幹線~東京~東海道新幹線~新大阪~東海道本線~大阪~大阪環状線~福島)での話で、「大阪市内」を一旦脱出して再度「大阪市内」に入る経路ならば購入可能です。

    その最短経路は、上記の新大阪から、新大阪~おおさか東線~久宝寺~関西本線~天王寺~大阪環状線~福島です。これは、久宝寺が「大阪市内」に含まれず、そのため上記の「大阪市内」一旦脱出に当てはまるためです。

    正に「上手の手から水が漏れる」。

  3. 「福島県と大阪市を結ぶ「福島~福島」の乗車券は買うことができません。」という説明は誤りです。

    JRの乗車券類は運送契約の約款である旅客営業規則(以下「旅規」という。)に基づいて発券されます。記事にもありますが,旅規第86条(特定都区市内にある駅に関連する片道普通旅客運賃の計算方)では,大阪市内の駅については「大阪市内の駅から片道の営業キロが200キロメートルを超える区間内にある駅との相互間の片道普通旅客運賃は、大阪駅を起点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する。」と規定されています。これが(環)福島駅ではなく大阪市内を発駅となる理由です。

    しかし,

    これは,ごくごく普通の経路「(環)福島(大阪環状線)大阪(東海道線)新大阪(東海道新幹線)東京(東北新幹線)(北)福島」を想定した場合です。JRの普通片道乗車券は,一筆書きで復乗にならない限り経路を自由に選択できます。そこで「(環)福島(大阪環状線)新今宮(関西線)久宝寺(おおさか東線)新大阪(東海道新幹線)東京(東北新幹線)(北)福島」の経路を指定すると,「(環)福島から(北)福島」の乗車券が発券されます。

    その理由は,旅規86条第1項にはただし書きにあります。「ただし、特定都区市内にある駅を発駅とする場合で、普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内の外を経て、再び同じ特定都区市内を通過するとき、又は特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るときを除く。」。上記の経路では,発駅は大阪市内の福島駅ですし,関西線の久宝寺駅は八尾市で大阪市内の駅ではありません。さらにおおさか東線で大阪市内の駅である新大阪駅に戻りますので,ただし書きの条件に該当します。そのため乗車券は「(環)福島から(北)福島」となります。

    このケースでは東京駅の近傍では旅規第70条の特例区間を経由しますので,運賃計算は「品川(山手線)池袋(赤羽線)赤羽」で計算することになります。

  4. 〜東北新幹線の郡山駅です。開業は1887(明治31)年〜

    となっていますが、1887年は明治20年なので修正をお願いします。

    • ご指摘ありがとうございます。

      記事を修正いたしました。

  5. (環)福島駅から(北)福島駅まで,最も営業キロが短い経路ですと,記事のとおり,普通片道乗車券は「大阪市内から(北)福島まで」で発券されます(旅客営業規則(以下「旅規」という。)第86条第1項)。

    しかし乗車する経路は旅客が自由に選択することができます。経路によっては,「(環)福島から(北)福島」までの乗車券が発券されます。これは,旅規第86条第1項ただし書きの規定によります。ただし書きの大意は,経路が大阪市内の駅から外に出て,再び大阪市内を通過する場合は除くとなっています。

    具体的には,次のような経路ですと(環)福島から(北)福島までの乗車券が発券されます。

    (1)(環)福島【大阪環状線】新今宮【関西線】久宝寺【おおさか東線】新大阪【東海道新幹線】東京【東北新幹線】(北)福島 営業キロ862.7キロ,運賃11550円,有効期間6日

    (2)(環)福島【大阪環状線】新今宮【関西線】天王寺【大阪環状線】京橋【JR東西線】尼崎【東海道線】新大阪【東海道新幹線】東京【東北新幹線】(北)福島 営業キロ865.9キロ,運賃11550円,有効期間6日

    (3)(環)福島【大阪環状線】大阪【東海道線】神戸【山陽線】西明石【山陽新幹線】新大阪【東海道新幹線】東京【東北新幹線】(北)福島 営業キロ942.0キロ,運賃12210円,有効期間6日

    なお,東京近傍は旅規70条の特例区間ですから,運賃計算は最短経路である「品川【山手線】池袋【赤羽線】赤羽」で計算します。(3)に関して,復乗しているように見えますが,新大阪・西明石間は旅規第16条の2第1項第1号の規定によって,在来線と新幹線が別の線路として取り扱われるため,このような経路は片道になります。

  6. 記事内で「福島→福島は買えません」という旨の紹介をされていますが、事実とは異なり、実際は買えると考えられます。

    例えば、

    福島→(路線名略)→新大阪→(おおさか東)→放出→(片町)→木津→(関西)→天王寺→(大阪環状)→福島

    とすると、旅客営業規則第86条のただし書き

    「特定都区市内にある駅を着駅とする場合で、発駅からの普通旅客運賃の計算経路が、その特定都区市内を通過して、その特定都区市内の外を経るとき」により特定都区市内制度が適用されず、着駅が大阪市内ではなく(環)福島となるためです。

  7. 大久保駅……

  8. 福島県は重複駅が意外と多いですね。今回の他にも只見線の根岸駅と横浜市にある京浜東北線·根岸線の根岸駅は有名ですよね〜