「日本は原子力潜水艦を持てるの?」→「激ムズです!」 国際法×自衛隊の専門家が語る“決定的な理由”とは?

昨今、日本では潜水艦の次世代動力を研究するにあたり、原子力推進も選択肢として含むべき、という論調が挙がっています。実際、オーストラリアは原潜の導入を決め、韓国でも検討が始まっています。日本も可能なのでしょうか。

軍事機密の塊をどう管理する? 実はそのための規定が

 そうなると、原子力潜水艦に対してもIAEAによる保障措置が適用されることになるのでしょうか。しかし、高度な軍事機密の塊である原子力潜水艦の原子炉に対して、たとえば監視カメラの設置や定期的な査察など、原子力発電所などと同様のIAEAによる保障措置を適用することは事実上不可能です。

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オーストラリアがアメリカおよびイギリスと共同で開発を目論んでいるAUKUS級原子力潜水艦のイメージ図(画像:BAEシステムズ)。

 そこで、日本とIAEAとの間で交わされている「日IAEA保障措置協定(核兵器の不拡散に関する条約第3条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定)」が重要になってきます。これは、NPT上の非核兵器国がIAEAと結ぶ保障措置に関する条約で、日本は1977(昭和52)年にこれを結びました。

 その第14条では、「1、当核物質を平和的な原子力活動においてのみ使用する旨の日本国政府が行った約束と抵触しないこと」、「2、核物質が核兵器その他の核爆発装置の製造に使用されないこと」を条件として、特定の活動に用いられる核物質に関して、IAEAによる保障措置の対象から除外することができるというものです。ただし、これに関してはIAEAとのあいだで個別の取り決めを結ぶ必要があり、その内容をめぐって長期間の協議を要することになると考えられます。

 というのも、仮にこの枠組みの中で特定の核物質を保障措置の対象から除外した場合、これが核兵器開発に転用される可能性も否定はできず、安易にそうした取り決めを結ぶことは核拡散のリスクを大きくしてしまうことにもなりかねないためです。

 実際、日本と同じくNPT上の非核兵器国にあたるオーストラリアが、アメリカとイギリスの協力を得て原子力潜水艦保有計画「AUKUS」を進めていますが、まさにIAEAとの保障措置協定第14条に基づく取り決めをめぐって、さまざまな議論が続けられています。

 ただし、たとえばオーストラリアが潜水艦への搭載を計画している高濃縮ウランを用いた原子炉の場合、一度艦内に設置された原子炉を取り出すには、高い水圧に耐えられるよう設計された潜水艦の船体を大きく切断しなければならず、そのためにはドック内での複雑かつ長期間の作業が必要となります。裏を返せば、一度搭載された原子炉から核物質を取り出すことは困難であり、それによる核拡散の懸念は小さいといえるわけです。

 そこで、AUKUSについて議論する専門家の間では、軍事機密との兼ね合いも踏まえつつ、現実的な拡散防止の方策としては、原子炉の輸送、潜水艦への積み込み、その後の入港期間の確認等といった手段が現実的ではないか、という主張もなされています。

【完成イメージ!】これが建造予定の「最新の国産潜水艦」の構造です(画像)

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