「戦闘機買うお金が欲しい…」国民に助けてもらおう! 防衛力強化のため実施された驚愕の購入プランとは?

国家が国民の寄付で物品を調達する例は、世界的にも災害対応や福祉分野では珍しくありません。ですが、その対象が“超音速戦闘機”だった例はほとんど存在しません。

軍事費を集める新制度誕生

 そこで、国防予算の財源を確保するために1973年末から始まったのが国民防衛誠金という募金運動になります。

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F-4「ファントムII」戦闘機は2024年に韓国空軍から完全退役しており、この機体は退役を記念して「防衛誠金献納機」の塗装が再現され、現在はソウルの戦争記念館に展示されている(布留川 司撮影)

 名目上は寄付・献金形式で自発的とされていましたが、時代は軍事独裁政権を敷いた朴政権時代。実態は半強制的な国防資金動員だったといわれています。

 ただ、1973年末には北朝鮮が黄海周辺の韓国側水域への侵犯活動を頻繁に行ない、韓国国内の安全保障と国防意識は高まっていました。そうした国防への機運の高まりは、段々と寄付額の増加にもつながり、その金額は2年間で100億ウォン以上、制度全体では1988年までに累計609億ウォンに達しました。

 この費用の一部は「防衛誠金献機」の購入費用として使われました。しかし、韓国空軍のF-4戦闘機調達計画は1969年には決まっており、導入計画自体は寄付に関係なく進められていたのです。

 つまり、「防衛誠金献機」は寄付金を使った事実よりも、国民防衛誠金と国防意識を国民に印象付けさせる象徴としても活用されたといえるでしょう。ただ国民にも寄付で戦闘機を得ることができたことをアピールするため、1975年の引き渡し後には、「防衛誠金献機」は韓国国内の巡回飛行を行なって、その姿を国民に見せて回ったそうです。

 韓国空軍では2024年にすべてのF-4戦闘機を退役させており、現在、戦争記念館に展示している機体は、完全退役のセレモニーの為に「防衛誠金献機」を再現した機体となっています。

 日本でもかつて戦時中では軍に金銭や物品が献上される国防献金という制度がありました。しかし、戦後日本では寄付金で戦闘機を買うという発想そのものが制度的にあり得ません。一方で、安全保障環境の変化によって、現在の日本の防衛費は過去最大規模の金額となっています。

 戦争記念館に展示された「防衛誠金献納機」は、かつて国家が国民をどこまで国防に巻き込もうとしたのか、その境界線を静かに示す存在ともいえます。

【画像】実は日本でもあった? かつて寄付で作られた戦闘機

Writer:

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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