“100万円で新車が買える”時代はなぜ終わった? 昔は「クラウン」も160万円台だった! 装備なくすと逆に高くなる驚きのパラドックス

かつては高級車でも装備を削ぎ落とした「激安グレード」が存在しました。なぜ今はその選択肢が消えたのでしょうか。裏には意外な製造の事情がありました。いったい、どういうことなのでしょうか。

納期遅れを防げ! “モノグレード”戦略の秘密

 また、激安グレードが消えた理由は、工場の都合だけではありません。クルマを販売する側の納期の問題も大きく関わっています。

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スズキ「フロンクス」(画像:スズキ)

 たとえば、スズキが発売した新型SUV「フロンクス」は、インドで生産されています。もし仕様を細かく分けてしまうと、日本への輸送管理が複雑になり、納期が伸びてしまう恐れがあります。これを防ぐため、グレードをほぼ1つに絞り込む戦略をとりました。

 また、トヨタの人気ミニバン「アルファード」も、現行モデルの発売当初はグレードを「Executive Lounge」と「Z」の2種類に絞り込んでいました。これも部品点数を減らしてラインが停止するリスクを下げ、生産効率を最大化して納期遅延を防ぐ狙いがあったとされています。

 こうして見ると、かつてのように「100万円で新車が買える」時代が終わってしまったのは寂しいことかもしれません。しかし、それは単なる値上げではありません。

 現代の車両価格には、進化した安全性能に加え、複雑な仕様を廃止して効率よく車を届けるための時間(納期短縮)的な価値も含まれています。

 私たちは安く買う権利を手放した代わりに、高度な安全と時間を標準装備として手に入れたといえるのではないでしょうか。

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