「ホントに令和!?」 築100年級ゴロゴロ 富山地鉄の「本気で古い」激シブ駅舎5選【立山線編】 訪れるなら今のうち?

富山地方鉄道では一部区間の廃止が取りざたされています。同鉄道には昭和のまま、いやそれ以前の時代の雰囲気をそのまま残すレトロな駅が多く、今回はその中から上滝・立山線の趣ある5駅を紹介します。

立山線:千垣駅 タイムスリップ度・・・★★★☆☆

 富山県道6号線と線路の間に狭そうに建つ千垣駅は、1923(大正12)年に開業しました。立山線の前身である富山県営鉄道は、1921(大正10)年10月に旧横江駅まで開業。そして2年後に千垣駅まで延伸しています。

 駅舎は、道路側から見るとトタン板で改築され、出入口の扉もアルミサッシに置き換えられていますが、駅舎内に入ると壁面にベンチの背もたれを有した古い作りの待合室がお出迎え。さらに駅舎ホーム側の意匠からも、古い建物であることが伺い知れます。

 建った時期は不明ですが、1923(大正12)年の開業時のものという説もあり、その場合、目立たない小さな駅舎ながら実に100年以上の歴史を有することになります。

 駅舎内は綺麗に清掃が行われており、駅への愛着を感じられます。現在は無人駅ですが、1997(平成9)年までは駅員がいました。出札口は板で塞がれていても、当時の雰囲気を今に残しています。

 なお立山線は冬季期間(12/1〜4/14)において岩峅寺〜立山間でデータイム運休という大幅な減便が行われるため、この時期の電車を用いた訪問には注意が必要です。

 ちなみにアルミサッシ化されたからといって、昭和度合いや閉じ込め度が下がるというわけではありません。アルミサッシの普及は昭和40年代以降と、すでに充分な歴史があり、サッシの色や中桟の有無形などによっては、昭和中期の雰囲気を強く出すアイテムとなります。

立山線:本宮(ほんぐう)駅 タイムスリップ度・・・★★★★☆

 富山地鉄や同鉄道の古い駅を知っている人なら、岩峅寺・横江・千垣とくれば次は有峰口駅……と思ったかもしれませんが、同駅は近年大規模なリフォームが行われました。歴史を感じさせる雰囲気はかなりなくなっており、ファン的には惜しまれるところではありますが、利用客にとってはたいへんありがたいことです。富山地鉄も、本来なら駅舎の改築は進めていきたいと思っているはずです。

Large 20251229 01

拡大画像

本宮駅。当時の看板が残る駅名板(遠藤イヅル撮影)

 そこで上滝・立山線編で最後に選んだのが、立山線の本宮駅です。終点立山駅のひとつ手前に位置していますが、立山駅までの距離は4.8kmもあり、電車では約10分かかります。というのも、かつてはこの区間に芦峅寺駅と粟野巣(あわのす)駅が存在していためです。

 1937(昭和12)年、富山県県営鉄道時代に千垣駅から粟野巣駅まで延伸開業、1955(昭和30)年には粟野巣駅から現在の立山駅である千寿ヶ原駅までが開業しました。芦峅寺駅は昭和20年代後半〜30年代前半の早い時期、粟野巣駅は1981(昭和56)年に廃止となっています。なお小見駅(現:有峰口駅)および千垣から千寿ヶ原駅までの区間は、現体制の富山地方鉄道の路線になるまで、富山県営鉄道・日本発送電・立山開発鉄道などいくつか経営母体を変更しています。

 本宮駅のホームと木造の駅舎は、道路や周辺の家々よりも一段高い場所に設置されています。駅舎はその作りと過去の航空写真から類推するに、昭和40年代に入ってから建ったのではないかと思われます。

 これまで紹介した駅よりは新しいですが、ドアや窓、建材など随所に建築時のオリジナル要素が残されていることから、これもまた立派な「昭和タイムスリップ駅」です。この時期の建物は残らないことが多く、しかもここまで昭和40年代感、高度成長期感がムンムンに出ているのは、むしろ貴重な存在と言えます。

※ ※ ※

 時間と歴史が作り出す風情と風格。それが、富山地鉄の古い駅には数多く見られます。駅舎を中心に紹介しましたが、それ以外にもホームや架線柱、柵や看板など、見所は尽きません。

【え…!ホントに令和!?】これが富山地鉄の「本気で古い」駅舎たちです!(地図/写真33枚)

Writer:

1971年生まれの自動車・鉄道系イラストレーター/ライター。雑誌、WEB媒体で連載を多く持つ。コピックマーカーで描くアナログイラストを得意とする。クルマは商用車や実用車、鉄道ではナローゲージや貨物、通勤電車、路面電車、地方私鉄などを好む。

最新記事

コメント