史上初! 人為的に「音速突破」したロケット機 形状に隠された意味と脱出不可のコクピットで命かけた“悪魔の空域” -1946.1.19

1946年の初飛行から80年。人類で初めて「音速の壁」を突破したベルXS-1は、機関銃の弾丸をモデルにした異形のロケット機でした。墜落=死を意味する過酷な設計で、いかにして“悪魔の棲む空域”を制したのでしょうか。

愛妻がモチーフ「魅力的なグレニス」号が “音の壁”を壊した!

 コックピットの風防は、空気抵抗を考慮して胴体のラインに合わせられていたので、前方をはじめ全周の視界はよくありませんでした。また、レバーロック式で操作に手間がかかる搭乗ハッチしか備えていないため、寸秒を争う緊急脱出はできませんでした。

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1947年9月26日、XS-1に座った状態のチャック・イェーガー(画像:USAF)。

 ただし、高速飛行中の機外脱出は不可能であり、よしんば脱出できたとしても、主翼の位置の関係で飛び出したパイロットはほぼ確実に主翼とぶつかるため、脱出できないことは問題とはされませんでした。

 XS-1は1946年1月19日、フロリダ州パインキャッスル陸軍飛行場で初飛行します。操縦はベル社の首席テストパイロット、ジャック・ヴァレンタイン・ウーラムズで、このときは滑空飛行でした。

 以降、かなりの期間にわたって滑空飛行テストが繰り返されましたが、その間に2度、脚の故障で小さな事故を起こしています。なお、リアクション・モーターズXLR11ロケット・エンジンを作動させた動力飛行は、1946年12月9日に実施され、こちらが本来の初飛行といわれることもあるようです。

 かくして実用に供されることになったXS-1の1号機(シリアル46-026)、愛称「グラモラス・グレニス(Glamorous Glennis:魅力的なグレニス)」号は、陸軍航空軍が空軍となって約1か月後の1947年10月14日火曜日の10時29分、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠ミューロック乾湖上空で、通算50回目のフライトにおいて水平飛行でマッハ1.06を記録します。かくして、見事サウンド・バリアーを突破したのでした。

 この時にXS-1の操縦輪を握っていたのは、チャールズ・エルウッド“チャック”イェーガー大尉で、乗機のニックネームの「グレニス」は彼の妻の名前でした。

 かくして人類は、今から78年前に音速を突破しました。そして21世紀の今日、最新の第5世代戦闘機では、スーパークルーズ(超音速巡航)できることは当然となっています。

【爆弾かミサイルのよう】B-29爆撃機と合体したXS-1ロケット機(写真で見る)

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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