唯一でマルチな「特急ロマンスカー」なぜ青い? 直通する「MSE」だからこその特別体験
小田急電鉄の60000形電車「MSE」は、日本で初めて「特急用車両の地下鉄直通」を実現した車両です。2026年現在も唯一の事例として、「マルチ」に活躍するMSEを取り上げます。
人間工学を取り入れ、乗り心地を追求
座席は、座席間隔983mmで回転式リクライニングシートを採用。テーブルは肘掛け内のみのインアームテーブルで、A4判ノートパソコンの作業に対応しています。インアームテーブルの形は、展開していても座席の方向転換ができるように配慮されたものでした。このため背面テーブルは設置されませんでした。
座り心地をシート厚に頼らず人間工学に基づいた薄型設計にしたことで、長距離でも疲れない座り心地を確保しながら足元にゆとりを持たせた座席は、EXEの1000mmより座席間隔は狭くなったものの、背もたれを薄くしたことで足元空間は42mm広くなりました。
座席鉄の筆者としては「クッション、特に背もたれが薄い」「座面がリクライニング時に凹まない」「背もたれが直線的」と感じ、やや惜しいという印象です。
3号車と9号車には「カフェカウンター」が設けられました。運行開始当初の千代田線直通列車「メトロはこね」では、カウンター営業とワゴンサービスの双方が行われました。筆者は予約弁当を地下鉄内で受け取って食べたことがありますが、日常風景の中での弁当の味は格別でした(現在は非営業)。なお、カフェカウンターには日本の鉄道車両で初めてAED(自動体外式除細動器)が設置されています。5号車には車いすに対応したフリースペースも設けられました。
ロマンスカー伝統の警笛「ミュージックホーン」も取り付けられ、小田急線と千代田線内で使用されています。
2008(平成20)年に運行を開始したMSEはその後、事前計画より広い範囲で使われています。平日は湯島ではなく北千住から、町田・相模大野ではなく本厚木まで「メトロホームウェイ」として足を延ばしました。土休日は北千住~箱根湯本間の「メトロはこね」として運行されたほか、2011(平成23)年まで東京メトロ有楽町線新木場駅に直通する臨時列車「ベイリゾート」にも使われました。
現在は、平日の「メトロホームウェイ」の一部が大手町発のほか、本厚木→北千住間の「メトロモーニングウェイ」にも使われています。土休日は分割併合能力を活かして、北千住~箱根湯本・片瀬江ノ島間の「メトロはこね・えのしま」として走っています。
また、2012(平成24)年からJR東海の御殿場線に乗り入れる「あさぎり」(現「ふじさん」、新宿~御殿場間)にも使われるようになり、まさに「マルチ」な活躍をしています。
地下鉄に直通する唯一の特急専用車両MSEも、登場から20年近くが経過しています。今後リニューアルなども行われると思いますが、その性能を活かして活躍の幅を広げていくのか注視したいと思います。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。





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