姿なき “空の運び屋” 生まれるか!? 「ステルス輸送機」が抱えるジレンマと実戦投入された“極秘ヘリ” の実像
航空戦力を陰で支える輸送機ですが、現代の強力な防空網に対して極めて脆弱なのが弱点です。その制約を克服し、敵地へ極秘裏に潜入する「ステルス輸送機」開発のジレンマと、すでに実戦投入されていた“秘匿ヘリ”の実像に迫ります。
輸送機とステルスは水と油? 実戦投入されていた“極秘ヘリ”
特殊作戦部隊は、その任務の特性上、敵地奥深くへの隠密浸透と迅速な離脱を要求されます。一般部隊の機動とは異なり、少数精鋭による高価値目標への直接行動が中心となるため、投入手段におけるステルス性と生存性は決定的な意味を持ちます。
仮に輸送機が実効的なステルス性能を獲得できるとすれば、従来では考えられなかった距離と速度で、敵に予測されない地点へ戦力を投射することが可能となると考えられます。
もっとも、この構想には重大なトレードオフが伴います。ステルス性を確保するための外形設計や電波吸収材の適用は、機内容積や積載効率を犠牲にし、結果として輸送能力の低下とコストの増大を招く可能性があります。これは大量輸送を前提とする従来型輸送機とは根本的に異なる設計哲学を要求するものであり、汎用性の低下は避け難いでしょう。そのため、現時点においてステルス輸送機は実用化されていません。
現在、特殊作戦を専門とするアメリカ空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)は、MC-130J「コマンドーII」やCV-22B「オスプレイ」といった既存機に対し、夜間低空侵入能力や高度な自己防御システムを付与することで生存性の向上を図っています。しかし、これらはあくまで被発見後の生残性を高める措置に過ぎず、防空網に対する本質的な脆弱性を解消するものではありません。
実は、ステルス輸送という概念の例外的かつ象徴的な事例として、2011年のウサマ・ビン・ラディン殺害作戦に投入されたステルス改修型のUH-60「ブラックホーク」の存在が挙げられます。本機は作戦中の不時着によって機体が現地に残置されたことで、その存在が露見しました。この一件は、ステルス輸送という概念が理論だけではなく、すでに限定的ながら実戦に投入されている現実を示唆しています。
もし将来的に本格的な固定翼のステルス輸送機が実現すれば、特殊作戦が大きく変革する契機となるでしょう。あらゆる空域が潜在的戦場となる現代において、「見えない輸送能力」は新たな戦力投射の中核となり得るのです。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。





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