カッチカチの重装甲なのに火力は「機関銃1丁」だけ!? 英国の「極端すぎる歩兵戦車」が生まれた切実な事情

第二次大戦の直前、イギリスは驚異的な防御力を持つのに、武装は機関銃1丁のみという極端な戦車「マチルダ」を配備しました。なぜ大砲を積まないアンバランスな戦車が誕生したのか、その切実な開発背景と実戦での結末をひも解きます。

「対戦車砲が怖い」から生まれた2つのアイデア

 まず大前提は、「当該の戦車」は歩兵支援が主任務なので低速でもよいが、代わりに既存の対戦車砲では貫徹不可能な重装甲を備える、というものでした。そして、この要件に続いて、次の2案を出します。

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マチルダI歩兵戦車の乗員数は操縦手と車長兼銃手の2名のみ(柘植優介撮影)

 第1案は、重装甲を備えた低速で小型、機関銃を装備した戦車を大量に生産し、同車の大群に先導された歩兵部隊が、戦線の敵兵を排除して進むというプランです。これは、「重装甲」こそ施されていませんが、機関銃搭載のタンケッテ(豆戦車)による歩兵支援として、演習を通じて過去に詳しく検証された戦術に「重装甲」という要件を加えたものといえました。

 つまりホバートは、第1案の策定に際して現実に目を向け、「小型だが重装甲で機関銃を備えた戦車」さえ完成すれば、すぐに実行可能な即効性のある案となるように配慮したわけです。

 続く第2案は、低速ながらそれまでの一般的な戦車と変わらない車体寸法で、機関銃に加えて戦車砲も搭載し、中口径榴弾の直撃にも耐えられる重装甲を備え、歩兵部隊を先導して戦う戦車というものでした。敵が戦車で反撃してきた場合は、歩兵部隊を掩護するため自車の戦車砲で返り討ちにする、つまり戦車戦を遂行可能という条件が付加されていました。

 この発想は、かねてよりイギリスで提唱されていた「突破用戦車」の概念そのものでした。

 このように、両案とも軍関係者にとってわかりやすく、しかも即効性が高いものでした。ホバート准将は、まず第1案を実行し、続けて第2案へと進み、後者によって誕生した「重装甲戦車」を主力にすればよいとエリス中将に伝えたといいます。

 するとエリス中将は、この提案に従えば、自分の「心配の種」たる対戦車砲への不安が解決できると考え、早速、ホバート准将の案に示された低速、重装甲で歩兵支援を主任務とする戦車を、新たに「歩兵戦車(Infantry TankまたはI-Tank)」と命名し、まずは第1案を進めることにしたのです。

【写真】砲塔側面の目がポイント! 往時の姿で展示される「マチルダI」

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