カッチカチの重装甲なのに火力は「機関銃1丁」だけ!? 英国の「極端すぎる歩兵戦車」が生まれた切実な事情

第二次大戦の直前、イギリスは驚異的な防御力を持つのに、武装は機関銃1丁のみという極端な戦車「マチルダ」を配備しました。なぜ大砲を積まないアンバランスな戦車が誕生したのか、その切実な開発背景と実戦での結末をひも解きます。

砲弾は弾くが反撃できない… 悲しき実戦デビュー

 こうして、イギリス陸軍初の歩兵戦車には「歩兵戦車Mk.I(A11)」という参謀本部戦車開発番号と、秘匿名の「マチルダ」が付与されました。しかし開発スピードは遅く、試作1号車の完成は1936年9月でした。

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次に登場した「マチルダII」歩兵戦車。2ポンド戦車砲を搭載し、ようやく対戦車戦闘が可能になった(柘植優介撮影)

 ただ、装甲の最厚部は65mmと、30mm前後の装甲厚が平均的だった当時の戦車のなかでは図抜けた防御力を誇りました。クルーは2名で、車体上部に水冷式の7.7mm機関銃1丁が装備された砲塔が設けられ、ここに車長が搭乗。そして車体前部中央に操縦手が乗りました。

 こうして「マチルダ」は完成しましたが、後に後継車の「マチルダII」が登場すると、本車は「マチルダI」と称されるようになりました。

 とはいえ、「マチルダI」は前述したように機関銃1丁しか装備していなかったため、イギリス陸軍は当初から、戦術の実証と訓練に用いる予定でした。

 しかし第2次大戦の勃発で戦車不足が顕著になり、同大戦の緒戦であるポーランド侵攻で、ドイツ軍がやはり機関銃しか装備していないI号戦車を第一線で多用しているという情報を得たこともあって、「マチルダI」であっても戦力として有用と判断。1940年5月のフランス戦に投入します。

 結果、「マチルダI」は、その重装甲でドイツ軍の3.7cm対戦車砲の直撃には耐えられたものの、機関銃だけではドイツ軍の装甲車や戦車を駆逐させられるほどの火力ではなかったため、ドイツ軍の侵攻を撃退することはできませんでした。

 結果、イギリスがフランスから撤退したのを最後に第一線への投入は終了、以降は訓練用になってしまいました。

 防御力と攻撃力がアンバランスな「マチルダ」歩兵戦車でしたが、同車もまた戦車の発達のひとつの側面と言えるでしょう。

【写真】砲塔側面の目がポイント! 往時の姿で展示される「マチルダI」

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

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