陸自の「昭和の老兵」が洋上75kmの標的艦を撃破! 海外で見えてきた「移動する多国籍の砦」の完成形

フィリピンで行われた米比主催の共同訓練「バリカタン26」で、陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾が実射されました。これは単なるミサイル発射訓練に留まらず、日米が連携して構築する“分散型・機動型の海上拒否ネットワーク”のデモンストレーションでもありました。

現代の島嶼防衛戦で重要なのは?

 88式と一緒に映っているのは、アメリカ海兵隊の「NMESIS」です。ノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社が開発したナーバル・ストライク・ミサイル(NSM)を搭載した新型の沿岸対艦ミサイルシステムで、小型高機動力、無人運転や空輸展開も可能です。小規模部隊で島嶼(とうしょ)へ迅速展開し、敵艦隊を牽制、抑止するために設計された兵器です。

 かつてアメリカ海兵隊は、「上陸して地上戦を行う部隊」でした。しかし中国軍の長距離精密打撃能力が急速に向上したことで、大規模部隊を集中的に展開する戦い方は危険視されるようになっています。そこで海兵隊は現在、「フォース・デザイン2030」に基づく大規模改革を進めています。その核心は、中国海軍の海洋進出を阻止する「島嶼拒否軍」への転換です。つまり海兵隊は、“移動する砦”になろうとしているのです。NMESISは、その象徴的兵器といえるでしょう。

 もう一つが、MADIS防空システムです。近距離防空・対ドローンシステムで、30mm機関砲とスティンガー・ミサイル、電子戦機能を装備する「Mk.1」、索敵レーダー、赤外線光学装置、指揮通信機能の「Mk.2」の2種類でペアを組みます。

 ロシア・ウクライナ戦争でも明らかになったように、ドローンによる戦場監視は常態化しています。ミサイル部隊が発射準備を始めれば、その位置は上空から発見され、自爆ドローンや徘徊弾薬、砲撃などによる反撃を受ける危険があります。「敵艦にミサイルを命中させる」前に「ミサイルを撃つまで生き残れるか」が重要になっています。そのため対艦攻撃、防空、対ドローン、電子戦、分散機動をセットで運用しなければなりません。MADISはその生存性を支える装備となっているのです。

 88式は古い兵器です。すでに自衛隊では、より長射程の25式地対艦誘導弾の整備が進められています。しかし今回重要なのは、新旧スペック比較ではなく「相互運用性」です。この演習では、アメリカ軍のISR(情報・監視・偵察)、陸上自衛隊の88式、アメリカ海兵隊のNMESISとMADISなどが、一つのキルチェーンとして構成される可能性を示しました。フィリピンが導入に関心を示しているともされます。

 つまり現代の島嶼防衛戦では、「どこの国のミサイルか」ではなく、「誰が探知し、誰が撃ち、誰が守るか」が重要になっているのです。1980年代生まれの88式であっても、そのネットワークの一部として機能するなら、依然として大きな価値を持ちます。フィリピンの88式の映像は、中国の「船」に対して第一列島線内で多国間の「砦」ネットワークが構築された瞬間を映したものでもありました。

【写真】88式の初弾が標的艦に命中した瞬間

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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