「宿敵」となぜ手を組んだ? 首都圏のJR特急「私鉄直通史」 将来は空港アクセスも?
首都圏は私鉄と国鉄・JRの相互直通運転が多く行われてきた地域です。今回は特急列車に絞って、いつから、どのような直通運転が行われてきたのかを解説していきます。
富士山観光で活況
富士山麓電気鉄道は、1934(昭和9)年に早くも新宿~富士吉田間の臨時列車「高嶺」として直通運転が始まっており、関東では一番長い歴史があります。ただ、国鉄時代は「かわぐち」などの急行列車、JR化後は快速列車であり、特急列車の直通が始まったのは、2014(平成26)年の特急「成田エクスプレス」が最初です。E259系電車が、成田空港~河口湖間を3時間半程度で結ぶという、かなりの長距離特急でした。
現在は2019(平成31)年に運行を開始した千葉・新宿~河口湖間の特急「富士回遊」が直通運転を行っています。
東武鉄道は2006(平成18)年から、新宿~東武日光・鬼怒川温泉間で、特急「日光」「きぬがわ」「スペーシアきぬがわ」を運行しています。首都圏と日光の鉄道輸送は、国鉄(JR)と東武が長年ライバル関係だったため、両者が手を組むことは衝撃を持って受け止められました。使用車両は東武が100系「スペーシア」でした。JR東日本は485系、189系でしたが、現在は253系1000番台です。
JR・東武の直通運転の特徴は、東武100系の臨時運行で品川、上野、八王子など、JR東日本の各地に乗り入れることです。JR253系も海浜幕張、千葉、八王子などからの臨時列車設定事例があり、季節需要をきめ細かく拾っています。ただ、東武100系、253系ともに経年が長く、今後どのような直通運転になるのかは注目の集まるところです。
首都圏で唯一、JR東海への直通を行っているのは、小田急電鉄新宿~御殿場間を直通する特急「ふじさん」です。小田急との直通は1955(昭和30)年から。最初は御殿場線が非電化だったため、小田急がこのためだけに気動車を保有して乗り入れました。特急化は1991(平成3)年からで、「あさぎり」としてJR371系と、小田急20000形「RSE」が新宿~沼津間で共演しました。
2012(平成24)年に御殿場~沼津間の乗り入れは終了し、車両も小田急60000形「MSE」だけとなって、JR東海車両の乗り入れはなくなりました。
なお特急「あさぎり」は、2018(平成30)年、特急「ふじさん」に改称されました。富士山を挟んで、小田急と富士山麓電気鉄道に直通するJR特急列車がそれぞれ「富士」を名乗るところに、インバウンド需要の大きさが感じられます。
現時点では、新たな直通運転計画はありませんが、2016(平成28)年の交通政策審議会の答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」において、「久喜駅での東武伊勢崎線と東北本線(宇都宮線)の相互直通運転化等の工夫により、さらに広域からの空港アクセス利便性の向上に資する取組についても検討が行われることを期待」と書かれており、沿線自治体も実現を要望しています。技術的には東武の車両がJRに直通することは問題がありません。実現したら「直通特急史」に大きなインパクトを加える存在になりそうです。
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。





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