離島防衛の“切り札”となるか?「新たな多目的ミサイル」総火演で初公開…よく見ると形が違う!

2026年の富士総合火力演習で披露された新装備「多目的誘導弾システム(改)」。システム構成車両を従来の半分に削減しつつ、AI活用による命中精度の向上やネットワーク化を実現。進化のポイントを解説します。

システムは3両構成 値段も4億円カット

 数多くの新装備が披露された2026年の「富士総合火力演習(総火演)」ですが、注目すべきは「多目的誘導弾システム(改)」でしょう。

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富士総合火力演習で披露された各種最新装備。赤い矢印で指し示したのが多目的誘導弾システム(改)。後ろに続くのが25式偵察警戒車、右奥が装輪装甲車(指揮通信型)AMV(武若雅哉撮影)

 これは、既存の96式多目的誘導弾システムの後継として開発された最新のミサイルです。そもそも、96式多目的誘導弾システムは、川崎重工業製の対戦車・対舟艇ミサイルシステムであり、教育用を除くと、配備先も北海道と九州の対舟艇対戦車部隊に限定されるため、実はレアな装備です。

 総火演でもチラッと登場するだけなのですが、射程は10km程度といわれており、世界初の「光ファイバー赤外線画像誘導方式」を採用しています。

 ただ、高性能ゆえにシステムは複雑で、発射機、地上誘導装置、射撃指揮装置、情報処理装置、装填機、そして観測機材の6両1セットで構成されています。

 システム全体の価格は約27億円、ミサイルは1発あたり約5000万円と、決して安い金額ではなかったことから、調達は全37セットで終了。結果、前述したように全国に配備されることなく終わっています。

 こうした反省から、新たに開発された多目的誘導弾システム(改)は、システム構成車両を発射装置、指揮統制装置、捜索標定装置の3両へと減少、1セットあたりの調達コストも約23億円に削減されています。

 発射装置の後部に搭載しているランチャーは、96式多目的誘導弾システムでは四角形でしたが、円形キャニスターが見えている状態へと変わっています。これは、再装填を容易にするための工夫です。再装填の簡略化は隊員の負担軽減に直結し、部隊の継戦能力を大きく向上させます。

 また、研究段階のデータによれば、ミサイルが自らレーザー照射を行い、地面高と目標との高低差を確認し、確実に目標に命中する仕組みが取り入れられています。さらには、海上目標に対して、波の高低を把握し、搭載するAI機能で連続する波と目標の高さ情報を比較しながら、目標に向かって確実に飛んでいく高度な仕組みも実装されていると考えられます。

 これ以外にも、陸上自衛隊が多種多様な事態に対して、一元的に対処できるように開発した「火力戦闘指揮統制システム(FCCS)」との連接も可能になりました。システムをコンパクト化しつつ最新技術を詰め込んだ多目的誘導弾システム(改)は、敵の上陸用舟艇や戦車などを比較的遠距離から撃破可能な、陸自の“切り札”的な存在になるかもしれません。

【ディテールを細かく見る】これが新型ミサイル「多目的誘導弾システム(改)」です(写真)

【特集】日本を守る新装備の数々 陸自最大の実弾演習「総火演2026」で初披露!

Writer:

2003年陸上自衛隊入隊。約10年間勤務した後にフリーフォトライターとなる。現場取材に力を入れており、自衛官たちの様々な表情を記録し続けている。「SATマガジン」(SATマガジン編集部)や「JWings」(イカロス出版)、「パンツァー」(アルゴノート)などに寄稿。

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