戦艦「扶桑」の“違法建築”は何と呼ぶのが正しい? 「艦橋」と「檣楼」なぜ曖昧になったのか

第二次世界大戦期の軍艦、特に戦艦の“顔”となるのは、艦首主砲塔の背後にそびえ立つ巨大な塔状の構造物。この構造物の正式名称を知っていますか?

艦の指揮や操艦を担う場所が「艦橋」

「檣楼」と比べると、「艦橋」は、19世紀中盤の蒸気外輪船を起源とする、比較的新しい構造です。外輪船とは、船体の両舷に張り出したパドルホイールと呼ばれる外輪の回転で推進力を得る船のことです。

Large 20260617 01

拡大画像

19世紀中頃の外輪船。パドルホイールのあいだが高くなり、構造物が設けられている(画像:パブリック・ドメイン)

 このパドルホイールを覆うハウジングの間を行き来するために、船体の中央を横断する架け橋が設けられました。これが「艦橋(ブリッジ)」と呼ばれた理由です。ただ、川に架かる橋と区別するために、英語ではNautical Bridge(航海艦橋)とも呼びます。

 この「艦橋」は比較的高所にあり、艦全体を見渡せるだけでなく、周囲への視界も開けていました。艦の操船指揮に適した場所であったため、艦長やスタッフが常時詰めるようになります。そして蒸気や水圧を用いる補助動力付き操舵機が普及すると、その制御端末である操舵輪が「艦橋」に置かれ、操艦指示が簡単にできるようになります。また艦内各所に命令を出せる伝声管も「艦橋」に集約されました。

 こうして時代が進むにつれて、「檣楼」は足場を増やして高さを求め、「艦橋」は床面積を求めるようになります。同時に、砲ごとに実施していた照準と射撃の命令を射撃指揮所が担うようになると、操艦をする「艦橋」と、砲撃を観測・指揮する「檣楼」は行き来しやすい方が便利なため、物理的に接近するようになります。そして、第2次世界大戦を迎える頃には、「檣楼」の基部に「艦橋」が組み込まれる形で、ほとんど一体化したのです。

 このような歴史の結果できあがった高層構造物なので、解説や戦記本では、砲撃指揮の視点では「檣楼」と呼び、操艦や司令部の描写では「艦橋」という言葉を使い分けるようになります。ただ、軍艦によっては「艦橋」と「檣楼」が完全に一体化していない場合もあります。だから「艦橋構造物」と呼んで、建物全体を指すような表現も使われるのです。

【個性的!?】写真だと一目瞭然! 日本戦艦の進化で学ぶ「艦橋」「檣楼」の違い

Writer:

1973年生まれ、上智大学文学部史学科卒業、東京都立大学大学院人文科学研究科中退。 雑誌編集者、ゲーム会社ウォーゲーミングジャパン勤務等を経て、各種メディアにて歴史・軍事関連の執筆や翻訳、軍事関連コンテンツの企画、脚本などを手がける。Youtube「宮永忠将のミリタリー放談」公開中。

最新記事

コメント

記事ランキング

  1. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  2. 都市に迫るロシア軍の「弾道ミサイル」が“空中で木っ端みじん”になる瞬間をウクライナ軍が公開 追尾から撃墜まで詳細に
  3. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  4. 海自潜水艦 アメリカ海軍の“歴戦の揚陸艦”を標的に魚雷発射! 実弾演習で巨大な水柱があがる瞬間を公開
  5. 「海自最大の護衛艦」と「世界最大級の軍艦」が洋上で並んだ! 圧巻の編隊航行を上空から捉えたショットが公開
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. あと1年足らずで「現金でバス乗れなくなります」 全路線“完全キャッシュレス化”疑問に応えるサイト開設 京王バス
  4. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  5. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開