路線バスの運賃どう決まる? 民間で「日本最低運賃」のバス会社に聞く

値上げすれば首絞める? 運賃の基準とは

――民間事業者としては「日本最低運賃」とのことですが、何をもって最低なのでしょうか?

「対キロ区間制」運賃制度における当社の基準賃率23円20銭が、全国の民間バス事業者のなかで「最低」です。この運賃は1994(平成6)年に国から認可されて以来、24年間そのままです。「岡山後楽園バス」など一部路線と、岡山市内のバス事業者共通で定めている特定区間内以外では、この対キロ区間制を採用しており、10kmで大人280円、15kmで390円です。

 ちなみに、1998(平成10)年に国へ値下げ申請をしたのは、他社と競合する区間において、当社の基準賃率とその社の基準賃率とのあいだをとった運賃が国によって設定されていたことについて、規制緩和を求めたものです。当時、この区間では、当社の基準賃率よりも6円高い運賃となっていました。

――そもそも御社の運賃はどのような基準で決めたのでしょうか?

 地方では15km、20kmを超えるバス移動もザラですが、これが往復で1000円を超えるとご利用いただけなくなると思い、そこにこだわりを持っています。諸々のコストを賄うべく運賃を上げたとしても、最終的にはお客様にご利用いただかなくては意味がなく、自分で自分の首を絞めることになると考えています。細々とですが、おかげ様で補助金をいただくこともなく、借金もありません。

――とはいえ、全国的に路線バスが苦戦している状況です。何かコスト削減の秘訣などはあるのでしょうか?

 ひとつ挙げるとすれば、回送の少なさでしょう。お客様を乗せられない回送は、まるまるコストになります。ほかでは運行の2、3割を占めるところもあるなかで、当社では2%にとどまっています。車庫が市街地にあるのですが、テレビ電話で運行前の点呼を行うなどして、「車庫から郊外の始発地まで回送してから営業運行に就く」といった手間を省く仕組みをつくっています。

※ ※ ※

 宇野自動車では2015年に、低床タイプの新車を25台まとめて導入しました。これは全車両数のおよそ半数にあたるそうです。また同年、岡山県の路線バスで初めて全車に無料Wi-Fiも導入しています。2018年には、もう半数の車両も新車に置き換える予定とのことです。

 ちなみに、宇野自動車の基準賃率23円20銭は、民間では日本一ですが、公営も含めれば2番目。「日本最安」は、鹿児島市交通局(鹿児島市営バス)の19円90銭です。

【了】

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コメント

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3件のコメント

  1. >低床ノンステップバス
    正しくはワンステップバスです。

    それにしても後楽園の値下げは…
    あそこが原因でしょ。

    まぁ大人の事情でおおっぴらには言えないでしょうけど。

    しかし宇野バスに以前乗ったときは安かったな。
    山陽町から乗って岡山駅で450円だったな?
    15kmくらいなので地元なら700~900円程度の運賃ですし。

    • ご指摘ありがとうございます。
      訂正いたしました。

  2. 宇野バスは市内で多い岡電バスの範囲外のニュータウンから都心部までの長距離利用が多いんじゃないかな
    郊外から都心部までの通勤通学が一定数あるという鉄道のような利用形態が多いのが低運賃にできる最大の理由かも