鉄道廃止によるバス転換、さらに加速か 「長距離バス王国」北海道の実情

JR北海道の路線見直しで鉄道代替バスは増えるのか?

 JR北海道では現在、利用者の減少などにより単独では維持が困難な10路線13線区について、国や道、沿線自治体などとの協議を始めていますが、道内鉄道網の方向性を検討する有識者会議「鉄道ネットワーク・ワーキングチーム・フォローアップ会議」が、2018(平成30)年2月10日(土)に、最終報告書『北海道の将来を見据えた鉄道網(維持困難線区)のあり方について』を取りまとめ、公表しました。今後は、道や自治体、JR北海道、国などが一体となり、「その地域に合った公共交通は何か」を議論することになりますが、一方で、バス転換に向けた動きも出始めており、今後の議論次第では、さらに加速する可能性もあります。

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路線距離が100kmを超える函館バス「快速松前号」。函館市と旧松前線が通じていた松前町を結ぶ(須田浩司撮影)。
2014年に鉄道が廃止された江差線 木古内~江差間の代替バス(須田浩司撮影)。
根室交通の標津線代替バス。道東を南北に結ぶ(須田浩司撮影)。

 すでにJRと地元が廃線で合意している石勝線の夕張支線(新夕張~夕張)については、夕張市がバス転換にあわせて公共交通の再編を行う案を固め、夕張支線にほぼ並行する形で市内の南北を結ぶバス路線を「南北軸幹線」と定めて1日10往復の運行を目指すほか、「南北軸幹線」に接続する形で「デマンド交通」の拡充や、市民へのタクシー運賃補助などを行うことにしています。

 また、JR北海道が提示した10路線13線区のひとつである札沼線の北海道医療大学~新十津川間については、2018年2月19日(月)に開催された「札沼線沿線まちづくり検討会議」において、JR北海道が「札沼線(北海道医療大学・新十津川間)の新しい交通体系」(バス代替案)を提示しました。これを受け、会議を構成する沿線自治体はバス転換か、月形町が求める石狩月形駅までの部分存続かの二者択一の結論を、3月の次回会合で出す方針です。会合の内容次第ではバス転換の方針が決定される可能性もあります。

 利用客減少で廃線になった鉄道路線をただ並行しただけの代替路線設定では、利用客のさらなる減少は明らかです。一方で、2014年に廃止された江差線 木古内~江差間の代替バスのように、利便性の高い運行経路設定(江差ターミナルから江差高校や道立江差病院まで延長)や、バス停の増加(江差線10駅に対し50か所のバス停を設定)で利便性が向上した例もあります。

 鉄道代替バスのあり方には様々な議論がありますが、地元住民のニーズに合った路線設定や運行本数について沿線自治体、住民、事業者が意見や知恵を出し合い、その地域にとって必要とされる交通機関に育てていくことが必要ではないでしょうか。

【了】

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テーマ特集「【バス】車両やシートも多彩な路線バスや観光バス その乗り方、楽しみ方」へ

Writer: 須田浩司

自称「高速バスアドバイザー」。運行管理者資格所有。高速バス乗車1100回以上。 紙原稿・ネット原稿・同人誌・ブログなどを通じてバス・鉄道を中心とした 「乗りもの旅」の素晴らしさを伝える活動を行う。北海道在住。

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コメント

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9件のコメント

  1. 北海道に限ったことではないが、
    バス会社にかかる税金も見直さないとだめ。

    車両買えば消費税はもちろん自動車取得税など。
    燃料入れれば揮発油税など。

    計算式が差引きゼロになるわけではないけど、
    税をとるだけとって、
    赤字で税負担。
    もはや意味不明なことこのうえなし。

    他にも法律も不備で
    都市部の高頻発路線も過疎地の日に数本も全て同じ。
    どうしても負担や無理が。
    例えば過疎地は、
    責任事故発生時の重さ(懲役や罰金)は引き上げて、
    平常時は運行管理者と運転と整備一人に任せても大丈夫なはずなんだが…
    今の法律では無理。

  2. 車で旅行した時に摩周湖の辺りから帯広行きの路線バスが前を走ってたかな、よく都会で見た珍しい中型ノンステの11m級のバス、毎度の横浜市営バスを塗装そのままに名義だけを消し、洞爺バスが旅館循環に使ったような中古とは思えない綺麗なバスでしたが、さも立ち席無用な路線にても座席定員のバスを充当しないのは街中路線の送り込みの都合か?ノンステで受けられる各種優遇税制が目的か?しかし実際に車枠としてドア一つを中間に設置することで型式に改が付けば減税対象外であったり、北海道なら道税事務所になるのでしょうか?相談において言った者勝ちで受けられる優遇が存在したり、都心でも税制優先で場違いな場所に走る形のバスとか課題は山積ですね

  3. 「JR北海道が赤字で、除雪費用・・・」なんて記事を目にするにつけ、廃線にしてバスに転換しちゃえばいいじゃないか。って思っていたけれど、そうも単純じゃないんだなって思いました。
    単にJR北海道の赤字をバス会社や地元自治体に押し付けているだけなんだって、
    運転手不足や、これからますます高齢化、過疎化が進むでしょうからもっと深刻になるんでしょうね。

  4. それこそ廃線代行バスが気がつけば都市間バスになった例もありますよね……(士幌線糠平=十勝三股、一日一便ですが旭川=帯広のノースライナーみくに号)。
    なお帯広=音更間はバス会社の収入源状態という……。

  5. 廃線、バス転換もしょうがないと思うけど。
    利用しにくいダイヤはやめてほしい。
    時間的に日帰り不可能とか、利用しにくくして、利用者少ないから廃線って!
    新幹線に傾倒するJR北海道の考え方もダメだと思う。北海道に風景が見れない新幹線は必要なのかな。そんなに急ぐかな。

  6. 誰が為の移動手段かを忘れりゃ北海道に限らず何処もこんなもん

  7. バスのほうが運行コストが安いから鉄道が廃線になった。
    これは税金投入して高速道路を延伸した結果としてバスやマイカーが便利になってそちらに客を取られたのだから、それが民意とみることもできる。
    とはいえそれがバスも維持が困難になっているのだから、皮肉なもんで。
    北海道はマイカーが運転できる人以外は都市部に集めるようにした方がいいかもね。

  8. 転換後の路線バスは、他の既存のバス路線に混じってしまって存在感がなくなってしまうので、地方の人にとってはあることすらわからなくなってますます利用されないのではないだろうか?また乗り場もわかりづらいし運賃も高くなるし。どうしてバスの方がコストが低いだろうに運賃は高くなるのだろうか?
    まずは誰にでもわかりやすく、利用しやすい体系にしないことには始まらないような気がする。

    • バスだって法律変えて、路線ごとに運賃が違う体系を許容にすれば、元々が鉄道で利用が多かったところは、値上げ度合いを緩和、とか出来たと思う。今じゃ転換有無関係なく、利用者少なくてそれどころじゃないだろうけど。

      それよりわかりづらさの問題は同意。
      鉄道は、どんなローカル線でも、駅というランドマークがあって、さらにそれが普通の地図ならほとんど掲載されるという特権があるけど、バスはそういう用途で作られた地図や住宅地図でもなければ、バス停が乗ってない。