欧州戦闘機が米露とひと味違うワケ 前翼+三角翼、なぜこの組み合わせが多いのか

「ユーロファイター」前夜、なにゆえデルタ翼なのか?

 1950年代頃、高速で侵入してくる爆撃機を迎撃するため速度性能の向上を追求した超音速戦闘機が開発されるなか、空気抵抗が少なく、より高速が出せる水平尾翼を持たない無尾翼デルタ機が登場します。当時のアメリカやソ連に比べて、推力が弱いヨーロッパ製のエンジンでも速度性能が発揮できたので、フランスのダッソー「ミラージュIII」などで採用されました。しかし水平尾翼を持たないため離着陸の性能は劣りました。

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CCV設計の無尾翼デルタ機ダッソー「ミラージュ2000」(2016年、石津祐介撮影)。

 一方スウェーデンでは国土が攻撃を受け滑走路が破壊された場合に、高速道路などから離陸し反撃が出来るよう、この無尾翼デルタ翼にSTOL性能(短距離離着陸)を持たせた戦闘機を開発します。

 翼を重ねたダブルデルタ翼の「ドラケン」、そして後継機種としてカナード(前翼)にデルタ翼を組合わせた「ビゲン」を開発します。この翼の組合せは「クロースカップルドデルタ」と呼ばれ、STOL性能と機動性に優れており、のちに「ビゲン」の後継機種として開発された「グリペン」や、「ユーロファイター」「ラファール」でも採用される事になります。日本の防衛庁技術研究本部(当時)でも、練習機T-2にカナードを取付けて、CCV(運動性能向上機)の研究を行っています。

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CCVの技術研究のためにカナード翼を取付けたT-2(1985年、後藤丈志撮影)。

 やがて、ソ連に対抗できる戦闘機を開発するため1980年代にフランス、西ドイツ(当時)、イギリスによって「ユーロファイター」の共同開発計画が持ち上がり、1983(昭和58)年にはイタリアとスペインも加わり開発がスタートします。

 ところがフランスは、開発機に艦上機の性能を持たせることと自国製のエンジンの使用を要求したため、仕様の相違を理由に1985(昭和60)年に共同開発から脱退します。そして自国での開発を進めた結果、完成したのが「ラファール」です。1986(昭和61)年に初飛行を行い、2000(平成12)年には実戦配備されました。「ユーロフファイター」と外見がよく似ているのは、共同開発のデーターを活用したからだといわれています。

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コメント

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3件のコメント

  1. 単純にステルス性能の概念が無かっただけだろう。
    F-15の機動性を見て”今からの時代は機動性”の考え方だったんだろうな。
    その頃には秘密裏にF-117を持っていて、高いレベルで機動性とステルス性を併せ持つ機体を作ろうとアメリカが言い出したのじゃないの?

  2. ドイツやスウェーデンなど、欧州の中小各国は自国が通常戦の戦場になるという前提を持っているのでしょう。今までも何度も戦場になってるし。北米の大国は、自国では核戦争への防空は核抑止力がメインで、通常戦力の防空は州航空隊の役割じゃなかったですか? 空軍は防空でなくて攻撃主体。自国が戦場になったのは、内戦以外では過去に無いし。

    で、要求仕様は北米と欧州とで異なって来るのが当たり前。(英仏は攻撃の比重もちょっと高いか?)

    欧州では...
    滑走路をちょっと攻撃されたら使えない様では困るから、STOL性能は重要。某大国程の財力は無いけど機数は必要だから、機体価格を抑えると共にマルチロール化で開発機種数・総機数を絞る。大出力エンジンが無くても高速・加速力・敏捷性・兵装搭載量などは必要なので、あまり大きく重い機体にはできない。こういった制約内では空力的な設計で能力を高めなければならないので、機体形状の最優先は(高額にもなる)ステルス性ではない。
    ......ほら、カナード付きデルタ翼機しか見えなくなってきたでしょ? 上コメントの「あ」さんも。

    それなりとはいえ(パックマンとか言われる)、ステルス性も盛り込んでるのだから立派だと思いますよ。特に小国スウェーデンが機体を独自開発してる事だけでもすごい事じゃないんですか。

  3. わが国にも先尾翼式戦闘機震電がありました。