米空軍、なぜいま「軽」攻撃機なのか A-10などの負担軽減、導入の背景に戦争の変質

軽攻撃機選定の背景

 そもそも、なぜアメリカ空軍は軽攻撃機を導入しようと考えたのでしょうか。それは、アメリカが2001(平成13)年以来続けている中東などでの対テロ戦争と関係があります。

 現在アメリカ空軍では、アフガニスタンなどでの武装組織に対する攻撃にF-16などの戦闘機やA-10といった攻撃機を投入しています。さらに将来的には、これらの航空機はステルス戦闘機であるF-35によって更新される予定となっています。しかし武装も貧弱なこうした武装組織に対して、F-16や、ましてやF-35を投入するのは非常に非効率的です。たとえるならば、ろうそくの火を消すために消火器を使うようなイメージです。

 さらに、近年中国やロシアといった国々からの軍事的脅威が強まるなかで、アメリカ空軍の保有する先進的で高性能な戦闘機を従来のような対テロ戦争に割く余裕がなくなってきています。

 こうした理由から、アメリカ空軍は脅威度の低い地域で活動できる安価な軽攻撃機を配備し、これまで同様の任務に従事してきた戦闘機などをこの役割から解放することで、現在必要とされている本来の任務、国家対国家の戦争を想定したような訓練などに復帰させようと考えたのです。

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テキストロンのAT-6(画像:アメリカ空軍)。

 また、軽攻撃機を運用する目的はほかにもあります。それが、他国との連携向上です。

 アメリカ空軍が安価な軽攻撃機を運用すれば、それを、武装組織と戦うほかの国々も導入しようと考えるかもしれません。また、すでに同様の航空機を導入している国は数多くあります。そうした国々とアメリカが共通の航空機を運用すれば両者の連携は向上し、共同作戦や戦闘訓練などを行いやすくなります。実際に、現在アメリカ軍と連携して自国内で武装勢力と戦闘を行っているアフガニスタン軍は、先述したA-29を攻撃機として運用しています。

【了】

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コメント

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4件のコメント

  1. 集団的自衛権に反対する奴は世界平和の敵

  2. 国の犬として戦場に行く度胸のある奇特な心の持ち主ならお好きにどうぞ。

  3. 敵が第三世代以降の制空戦闘機を投入してこない前提で小鳥遊(たかなし)さんを決め込む作戦か。
    たしかに、相手よりも「ほんのちょっとだけ強い」兵器を持ち込めば勝てる理屈だが・・・

  4. 古めかしい形状ですが、ターボプロップエンジンなのですね。

    プロペラを前にしたのは落下傘による緊急脱出時に引っ掛からない様にする為でしょう。

    複座型になっているのは対地攻撃機だから、様々な電子機器を搭載しているものと思われます。

    恐らく無人戦闘機で代用する案も存在したのでは?

    現実問題として敵味方の識別などの問題が有ったのでしょうね。