動くモフモフ、陸自の「偽装」技術 ペイントだけではない、戦場での身の隠しかた

準備に4時間、本番は30分

 実際の訓練では、クルマ全体を覆うような偽装は滅多にしないのですが、駐屯地一般開放日には、見た目のインパクトを狙ってか、冒頭のような偽装過多なクルマを見ることができます。一部のファンからは「モフモフ」などと呼ばれており、製作にはとんでもない時間が掛かっています。

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1/4tトレーラを牽引する1/2tトラック。よく見ると車体の左上部に偽装された隊員の頭が見える(矢作真弓撮影)。
こちらも偽装した1/2tトラック(矢作真弓撮影)。
段差で大きく跳ねる偽装された1/2tトラック(手前)と偽装していない同車両(奥)(矢作真弓撮影)。

 某駐屯地祭で取材したときに、この偽装の製作時間について聞いてみたところ、1両あたり4時間ほど掛かっているそうです。さすがに、これだけの草を集めるのは大仕事で、集めた草をクルマに巻きつけるのは更に大変なのだそうです。慣れればもっと早く作れるといいますが、それでも3時間以上はかかるとのことでした。それほど頑張って作っても、一般開放日の訓練展示は長くて30分ほどです。訓練展示終了後は、演習場の奥でひっそりとススキを取る作業が行われます。

 では実際のところはどうなのでしょうか。偽装は、手をかければかけるほど効果が高まるように思えるかもしれませんが、前述の「モフモフ」のようにあまりに大量の草などで覆ってしまうと、少しでも動いたら簡単にバレてしまいます。効果的という意味で現実的なラインとしては、クルマの輪郭を隠し、色の反射も抑えることができれば、敵に見つかる可能性は少なくなります。ただし、エンジンや排気の温度だけはごまかせないので、隠れている最中はエンジンを切っておく必要があります。専守防衛に専念する自衛隊の作戦行動からすると、動かず待ち伏せするのは得意です。

 それでも敵に見つかったとわかったらすぐに移動して、攻撃を避ける必要があります。そうしたときにも、あの巨大なモフモフが動いては、どこに行こうにも、どこに隠れようにもすぐに見つかってしまいます。そのため、あれだけのモフモフはイベント時のパフォーマンスと見ておいて間違いではないでしょう。

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