アメリカ宇宙軍創設、実際のところは? そのお仕事の中身と実現の可能性

トランプ米大統領が宇宙軍創設を指示したとのニュースが世界を駆け巡りましたが、コトはそうすんなりと進みそうにありません。実際のところ、どのような役割を担う組織で、そしてその実現性はどの程度のものなのでしょうか。

『スターウォーズ』や『エイリアン』の世界とは違う?

 2018年6月19日(火)、アメリカのトランプ大統領は「宇宙軍」創設に関して必要なプロセスを進めるように国防総省に対して指示しました。いったい、この「宇宙軍」とはどのような組織を指しているのでしょうか。

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「宇宙軍」というワードからは、SF作品で描かれた様々な物事が連想されるも、その実態は……。写真はイメージ(画像:アメリカ空軍)。

 宇宙軍と聞いて、みなさんはまず何を思い浮かべるでしょうか。映画『スターウォーズ』に登場する帝国軍の「スターデストロイヤー」か、あるいは映画『エイリアン2』に登場する宇宙海兵隊を想像される方、はたまた映画『007 ムーンレイカー』に登場するレーザー兵器で宇宙での戦闘を繰り広げた兵士たちを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、トランプ大統領が言う宇宙軍というのは、そのようなあからさまに兵器や兵士たちが宇宙で戦闘を繰り広げるための組織ではありません。

 現在、アメリカ軍やその同盟国の軍隊は、その機能の多くを宇宙に浮かぶ各種の衛星に大きく依存しています。たとえば、遠くにいる味方と通信するための通信衛星、敵情を把握する情報収集衛星、自分の現在位置確認や兵器の精密誘導に用いるGPS衛星、さらには敵からの弾道ミサイル発射を真っ先に探知する赤外線センサーを搭載した早期警戒衛星など、ざっとみただけでもこれだけ挙げることができます。言い換えれば、現在の戦争はこうした宇宙空間に浮かぶ衛星なしには戦えない状況にあるのです。

 そして、こうした衛星への高い依存度は、同時にアメリカ軍などにとって致命的な弱点ともなります。実際に、ロシアや中国はこうした衛星を破壊するための様々な兵器の開発を進めています。

 また、衛星にとっての脅威はこれだけではありません。宇宙空間には破壊された衛星などの破片など、いわゆる「宇宙ゴミ」が無数に浮かんでいます。もしこうした宇宙ゴミと衛星が衝突すれば、衛星がその機能を喪失する可能性もあります。

 こうした脅威から衛星を守るために、衛星を打ち上げ、その運用を管理したり地上から宇宙ゴミなどを発見して衝突を回避したりすることによって、アメリカ軍やその同盟国の軍隊などに必要な機能を提供する専門組織こそが、現実世界での宇宙軍なのです。

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1件のコメント

  1. アメリカ軍のシステムを考えればフォースユーザに当たる統合軍の機能別で戦略軍が今でも宇宙系の仕事をしている。
    ここに書いているのはフォースプロバイダーの話で実は空軍の宇宙コマンドだけではなく陸軍宇宙・ミサイル防衛コマンドや陸軍部隊戦略コマンド、海兵隊戦略コマンド、海軍艦隊総軍(戦略潜水艦)、空軍地球規模攻撃軍団があって、お仕事をするユーザーが必要とする戦力をプロバイダーが準備、訓練をすると分けられている。
    その辺を理解してないとぐちゃぐちゃな話になるし、宇宙軍が独立して各軍から取り上げると、訓練/準備が分かれてぐちゃぐちゃになるだろうな。
    マティス国防長官が懸念しているのはそういう点に関して懸念してるのだろう。
    戦略原潜の乗組員を海軍と宇宙軍が教育するのは二度手間という話になる。